「快楽堕ちした女優の末路-後編-」
「快楽堕ちした女優の末路-後編-」
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華やかなスポットライトの下、結城まきはついに「夢」を掴んだ。過酷な枕営業の闇をくぐり抜け、数々の屈辱的な夜を耐え抜いた末に、彼女は大女優の座に上り詰めたのだ。スクリーンに映るその姿は、完璧な微笑みと凛とした佇まいを湛え、観客を魅了する。業界の誰もが認める、努力の結晶。だが、そんな栄光の裏側で、まきの心は静かに蝕まれていた。
それは、あの夜から始まった。枕営業の果てに知った「性の喜び」。ただの手段のはずだった行為が、予想外の快楽を呼び起こしたのだ。男たちの荒々しい手が肌を這い、熱い息が耳元を焦がすたび、彼女の体は無意識に反応した。最初は耐え忍ぶための演技だったはずが、いつの間にか本物の渇望に変わっていた。仕事が終わると、ホテルのスイートルームに戻ったまきは、毎晩のようにベッドに身を投げ出す。指先が秘部を這い、息を荒げて頂点に達する――そんな孤独な儀式が、彼女の日常となった。
「かつての私は、こんな女じゃなかった……」
鏡に映る自分を睨みつけるまき。志した女優の姿は、純粋な情熱で輝く存在だったはずだ。台本を何度も読み込み、徹夜でセリフを磨き、どんな役でも魂を込めて演じきる。それが彼女の理想だった。なのに今は、撮影の合間にさえ、股間の疼きが抑えきれない。退屈な日常が、ただの空白のように感じる。
――すぐにでも……男のアレが、欲しい……
そんな衝動が、頭をよぎるたび、吐き気がする。淫乱な自分に、深い嫌悪が募る。女優以外の生き方は知らない。知りたくない。この世界で、すべてを賭けてきたのだから。
そんなある日、共演者の若手男優が、まきに告白してきた。控室の隅で、震える声で「まきさんみたいな人に、触れたいんです」と。まきは一瞬、胸がざわついた。だが、すぐに顔を上げ、厳しい視線を投げかける。
「バカなこと言わないで。女優は、そんな安っぽい欲で成り立つものじゃないわ。覚悟がないなら、業界から消えなさい」
言葉は鋭く、男優の顔を青ざめさせた。だが、その瞬間、まき自身が震えた。まるで自分自身に言い聞かせているようだった。あの枕営業の夜々を思い出す。審査委員長の冷たい笑み、取引の言葉、そして体を差し出した自分の「覚悟」。すべてを犠牲にしても、頂点を目指す――それが、かつての誓いだった。
「私……女優以外の生き方なんて、知らないのよ」
独り言のように呟き、まきは立ち上がる。ちょうどその頃、再び審査委員長から連絡が入っていた。「新しいプロジェクトの打ち合わせを」と。まきは深呼吸をし、覚悟を新たにする。もう、過去の亡霊に負けない。女優として、胸を張って進むのだ。
だが、運命は彼女の決意を嘲笑うかのように、残酷だった。ホテルのスイートルームで待つ委員長の姿を見た瞬間、まきの体は裏切った。スーツ姿の男がグラスを傾け、意味深な視線を向ける。言葉は事務的だ。プロジェクトの概要、役柄の詳細、予算の話。だが、まきの耳には届かない。視界の端で、男の股間がわずかに膨らむのを見て、喉が渇く。体温が上がり、下腹部に甘い疼きが広がる。
――いや……今は、仕事よ……
必死に自分を戒めるが、無駄だった。委員長の指が、軽く彼女の膝に触れた瞬間、理性の糸が切れた。まきは自ら男の首に腕を回し、唇を重ねる。服が乱れ、床に崩れ落ちる。男の硬いものが、彼女の奥深くを貫く。喘ぎ声が部屋に響き、汗と体液が絡み合う。まきは無様なメスの姿を晒す――四つん這いで腰を振り、懇願の言葉を漏らす。快楽の渦に飲み込まれ、すべてを忘れる。女優の仮面など、とうに剥がれ落ちていた。
その醜悪な光景を、扉の隙間から覗く影があった。かつてのライバル――そして、まきの憧れの女優、鈴木遥。業界の女王と呼ばれ、どんな逆境も華麗に乗り越えてきた存在。遥は静かに部屋に入り、ベッドの端に腰を下ろす。まきは気づき、凍りつく。体を隠そうとするが、遥の目は優しく、しかしすべてを見透かしていた。
「まき……あなたの本当の願いは、もう大女優になることじゃないのね」
その言葉は、針のように心を刺した。遥の視線は、ただの同情ではない。かつて自分も通った道を、知り尽くした者の慈悲。まきは涙を零し、崩れ落ちる。夢は砕け散り、新たな渇望が芽生えていた。快楽の虜となり、女優の鎧を脱ぎ捨てる自分を、受け入れるしかない。
前編では、彼女の「身体」が枕営業の闇に堕とされた。今回は、それ以上に残酷だ。「精神」まで、徹底的に蝕まれていく。ハードな試練を前向きに乗り越え、頂点に立ったはずの結城まきが、女優業を捨て、ただの快楽の奴隷――肉便器へと堕ちゆく過程を、存分に味わっていただけたら幸いです。この物語は、欲望の深淵を覗く鏡。あなたも、彼女の渇望に共鳴するかもしれません。