PR

▶【新刊】「無機質ギャルと甘々な恋愛」重戦車うさぎ隊

「無機質ギャルと甘々な恋愛」

無料サンプルはこちら ▶

 

 

 

「無機質ギャルと甘々な恋愛」

▶ 続きはこちら

 

 

 

 

 

 

============================

クラスカーストの頂点に君臨する一軍のギャル、安住鳴(あずみなる)。彼女はいつも無表情で、決して笑みを浮かべないことで学校中に知れ渡っていた。完璧な美貌に、完璧なスタイル。長い黒髪を軽くウェーブさせて、制服のスカートを少し短めに着こなし、周囲の視線を一身に集める存在だ。18歳の彼女は、クラスメートたちから憧れの的でありながら、近寄りがたいオーラを放っていた。一方、僕はクラスで目立たない存在。趣味が着ぐるみ作りという変わったもので、誰も理解してくれない。毎日、放課後に一人で教室の隅で布地を縫ったり、フェルトを切り抜いたりして、動物の着ぐるみを形作るのが唯一の楽しみだった。僕ももちろん18歳。内気で、友達も少なく、彼女のような輝く存在とは一生縁がないと思っていた。

そんな僕たちが付き合うことになったのは、本当に些細なきっかけからだった。あれは秋の訪れを感じる涼しい午後。文化祭の準備でクラスが賑わう中、僕はいつものように着ぐるみのパーツを机に広げて作業をしていた。テーマは「森の動物園」。僕が作ったキツネの着ぐるみの尻尾を、試しに縫い合わせているところだった。クラスメートたちはグループで飾り付けに夢中。僕の周りだけ、静かな空間が広がっていた。

すると、突然、柔らかな声が響いた。「それ、何? 面白そう」。

振り返ると、そこに安住さんが立っていた。彼女の瞳は、いつもより少しだけ輝いているように見えた。僕は慌てて手を止め、言葉に詰まった。「え、あ、着ぐるみの尻尾です。キツネの……文化祭で使うんですけど」。

彼女は無表情のまま、そっと机に近づき、尻尾を指でつまんで持ち上げた。「ふうん。毛並みがふわふわだね。どうやって作るの?」。その質問に、僕は初めて誰かに自分の趣味を説明する機会を得た。興奮を抑えきれず、針の通し方や生地の選び方、さらには着ぐるみを着てポーズを取ってみせた。安住さんは一言も発さず、じっと見つめていた。僕は内心、退屈させてしまったかな、と肩を落とした。

ところが、次の瞬間――彼女の唇が、ほんの少しだけ緩んだ。「……へえ、意外と本格的。カッコいいかも」。それは、彼女の初めての笑みだった。いや、笑みというより、柔らかな微笑。クラスで有名な「笑わない安住さん」が、僕の前でだけ見せてくれた瞬間。心臓が激しく鳴った。あの微笑は、太陽の光が雲間から差し込むような、温かく優しいものだった。彼女の白い肌が少し赤らみ、長いまつ毛が優しく揺れる。僕は思わず見とれてしまった。

それから、安住さんは僕の作業を手伝うようになった。放課後、二人で教室に残り、着ぐるみの耳や鼻を一緒に作る。彼女は意外と器用で、糸の始末が上手い。「これ、こうやって縫うと丈夫になるよ」と、僕の隣でアドバイスをくれる。無表情の彼女が、時折ふっと微笑むたび、世界が明るくなった。最初はただのクラスメートとして。でも、だんだん彼女の内面を知るにつれ、惹かれていった。安住さんはギャルらしい派手な外見とは裏腹に、実は読書が好きで、静かなカフェで本を読むのが趣味だという。学校では一軍の女王様のように振る舞うが、本当は少し寂しがり屋。笑わないのは、過去にからかわれた経験から自分を守るためだった。

一緒に過ごす時間が増えるにつれ、彼女の笑顔も増えた。着ぐるみの完成を祝って、二人で校庭を歩いた日。夕陽がオレンジに染まる中、彼女が突然「これ、着てみてよ」とキツネの着ぐるみを勧めてきた。僕は恥ずかしがりながら着用。彼女はスマホで写真を撮りながら、くすくすと笑った。あの笑い声は、鈴の音のように澄んでいて、僕の胸を優しく締めつけた。「君の趣味、最初は変だと思ってたけど……今は大好き」。彼女の言葉に、僕は頰を熱くした。

そんな日々が続き、僕は確信した。「僕は彼女が好きだ」。安住さんのすべてが愛おしい。無表情の仮面の下に隠れた優しさ、時折見せる輝く笑顔、僕だけに向けられる視線。クラスカーストなど関係ない。彼女と一緒にいると、僕は自分らしくいられる。文化祭の前夜、着ぐるみが完成した教室で、僕は決意する。明日、彼女に告白しよう。心臓が早鐘のように鳴る中、僕は鏡に映る自分に呟いた。「がんばれ、僕」。

安住鳴。笑わない美少女が、僕の人生に微笑みを運んできた。彼女との未来を、想像するだけで胸がいっぱいになる。きっと、彼女も僕の気持ちに気づいているはず。明日の文化祭が、僕たちの新しい始まりになる――そう信じて、僕は一歩を踏み出す準備をする。