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「春くらべ7」

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大学生活の喧騒が戻ってきた。キャンパスには新緑が芽吹き、学生たちの笑い声が響き合う。そんな中、広木、綾、香純の3人は、かつての穏やかな日常を取り戻そうとしていた。だが、それぞれの心には複雑な感情が渦巻き、平穏な日々はどこか儚く、脆いものだった。

広木と綾は、ある週末、香純の住む高級マンションで特別な一日を過ごした。二人は互いに深い愛情を確かめ合い、時間を忘れて寄り添った。柔らかな陽光がカーテンの隙間から差し込み、リビングには穏やかな空気が流れる。綾は広木の手を握りながら、そっと微笑んだ。広木もまた、彼女の温もりに安心感を覚えていた。だが、その幸福な瞬間の中にも、どこかで香純の影がちらつく。香純はかつて芸能界で華やかな日々を送っていたが、あるスキャンダルで表舞台を追われ、今は普通の大学生として新たな一歩を踏み出していた。彼女の美貌と独特の雰囲気は、キャンパス内でもひときわ目立ち、注目の的だった。

香純自身、芸能界での激しい生活を離れ、静かな大学生活に身を置くことで心の平穏を取り戻そうとしていた。だが、過去の経験は彼女の心に深い痕を残していた。芸能界での過酷な日々は、彼女に強い承認欲求を植え付け、周囲からの誘いや視線を断ち切ることを難しくしていた。キャンパスで他の学生たちから向けられる好奇の目や、さりげない誘いの言葉に、香純はつい応じてしまう自分を抑えきれなかった。彼女のそんな行動は、綾の心に小さな棘となって刺さっていく。

綾はもともと几帳面で、物事をきちんと整理したい性格だった。一方、香純の自由奔放で少し無秩序な生き方は、綾にとって理解しがたいものだった。香純が約束を忘れたり、ルーズな態度を見せるたびに、綾の苛立ちは募った。だが、それ以上に綾を悩ませたのは、広木に対する香純の存在感だった。綾にとって香純は、広木の心を揺さぶる危険な存在であり、過去に二人が共有した時間への嫉妬が消えなかった。香純もまた、綾を広木の「本命」として意識し、複雑な思いを抱えていた。広木への愛情は本物だったが、綾との関係を壊すことへの罪悪感と、広木への想いが交錯し、彼女の心を揺さぶっていた。

広木自身、この二人の女性の間で板挟みになっていた。彼は綾の真っ直ぐな愛情に心から感謝し、彼女との未来を描いていた。だが、香純の奔放な魅力と、かつて共に過ごした濃密な時間は、彼の心に深く刻まれていた。3人ともが大人として新たな一歩を踏み出したはずなのに、互いへの想いは複雑に絡み合い、嫉妬と愛情が交錯する日々を送っていた。

この3人の関係は、単なる友情や恋愛を超えて、もっと深い絆と葛藤に満ちていた。広木は綾との穏やかな時間を守りたいと願いながらも、香純の存在を完全に切り離すことができない。綾は広木への信頼を保ちつつ、香純への苛立ちを抑えきれず、香純は自分の居場所を模索しながら広木への想いを捨てきれなかった。それぞれが抱える感情は、時にぶつかり合い、時に互いを深く結びつけ、3人の関係をさらに複雑で濃密なものにしていった。

キャンパスの桜が散り、新たな季節が訪れる中、広木、綾、香純の物語はまだ終わらない。彼らは互いに傷つけ合いながらも、愛し合い、成長していく。誰もが自分自身と向き合い、相手を理解しようとする中で、彼らの関係はさらに深く、鮮やかに進化していくのだった。