「双子のお姉ちゃんは今日も弟クンが大好き」



「双子のお姉ちゃんは今日も弟クンが大好き」
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双子のお姉ちゃんは今日も弟クンが大好き
椎奈は、鏡の前で長い髪を丁寧に梳かしながら、今日も弟の翔太を想っていた。同じ日に生まれた双子の姉弟。椎奈は姉として、いつも翔太のそばにいるのが当たり前だった。幼い頃から、手を繋いで公園を歩き、秘密の遊びを共有し、夜遅くまで語り明かした。あの温かな絆は、時が経つにつれ、椎奈の胸の奥で特別な炎を灯すようになった。翔太の笑顔を見るだけで、心が満ち足り、彼の声が耳に響くだけで、世界が輝く。椎奈にとって、翔太はただの弟ではなく、かけがえのない存在。愛情は深く、時には重く、独占したいという衝動が抑えきれなくなる。
大学に入ってからも、二人は同じキャンパスに通い、寮を共有していた。朝の支度を一緒にし、授業の合間にカフェで待ち合わせ、夜はリビングでくつろぐ。椎奈は翔太の好みをすべて知り尽くしていた。好きな紅茶の淹れ方、疲れた時に肩を揉む力加減、落ち込んだ日の励ましの言葉。でも最近、翔太の様子がおかしい。スマホを眺める時間が長くなり、頰を緩めて笑う。椎奈が声をかけても、ぼんやりとした返事。原因はすぐにわかった。翔太に、彼女ができたのだ。
名前は美咲。同じ学部の後輩で、明るく人懐っこい女性。翔太は照れながら話した。「椎奈、聞いてくれよ。美咲って子と、今日初めてデートなんだ」。その瞬間、椎奈の心に棘が刺さった。嫉妬。焼けるような感情が胸を焦がす。なぜ翔太が他の誰かと? 私たちの時間は、私たちだけのものだったはず。夜、ベッドで椎奈は目を閉じ、想像した。翔太が美咲の手を握り、甘い言葉を囁く姿。耐えられなかった。翔太は私のもの。双子として、姉として、もっと深い絆で結ばれているのに。
デート当日。翔太はリビングで準備をしていた。白いシャツにジーンズ、髪を整え、鏡で確認。椎奈はキッチンから覗き、息を潜めた。翔太の横顔は優しく、楽しげ。美咲との時間を心待ちにしているのがわかる。椎奈の指がグラスを強く握る。もう我慢できない。
「翔太、ちょっと待って」。
椎奈はリビングに踏み込み、翔太の前に立った。柔らかなニットワンピースが体に沿い、髪を耳にかけ、微笑む。翔太は驚いて振り返る。「椎奈、どうした? 俺、もう出かける時間だよ」。
「知ってる。でも、ちょっとだけ話させて。重要なことだから」。
椎奈は翔太の腕をそっと掴み、ソファに座らせた。自分も隣に腰を下ろし、距離を詰める。翔太の体温が伝わり、懐かしい匂いがする。椎奈の心臓が激しく鳴る。「翔太、美咲さんとデート? 楽しみ?」。
翔太は頰を赤らめ、頷く。「うん、初めてだから緊張してるけど……椎奈は? 何か予定あるの?」。
椎奈は首を振り、翔太の目を見つめた。双子の瞳は瓜二つ。互いの心が映るよう。「私は、翔太がいないと寂しい。いつも一緒にいるのに、急に他の人と……」。
声が震える。翔太は戸惑う。「椎奈、俺たち双子だろ? 姉貴として心配してくれるのは嬉しいけど、俺も自分の道を歩きたいんだ」。
その言葉が椎奈の嫉妬を爆発させた。椎奈は翔太の肩に手を置き、顔を近づける。「自分の道? 私抜きで? 翔太、覚えてる? 小さい頃、怪我した時、私が看病したこと。試験前、一緒に勉強したこと。全部、私がいたから翔太は大丈夫だったのに」。
翔太は目を逸らす。「それは……ありがとう。でも、今は違うよ。美咲はいい子で、俺のこと本当にわかってくれる」。
「私より?」椎奈の声に棘が混じる。翔太は黙る。椎奈はさらに迫る。手を翔太の頰に当て、優しく撫でる。「翔太、私の気持ち、知ってるよね? 弟としてじゃなく、もっと深い愛情。あなたがいない世界なんて、考えられない」。
翔太の目が揺らぐ。椎奈の言葉は甘く、温かく、心に染み込む。幼い記憶が蘇る。椎奈の優しさ、支え。美咲とのデートは魅力的だが、椎奈の存在は根深い。「椎奈……俺も、椎奈のこと大好きだよ。家族として」。
「家族以上よ」椎奈は囁き、翔太の唇に指を当てる。「見てて。私の愛は、誰にも負けない」。
椎奈は翔太を抱きしめた。柔らかな体が密着し、翔太の鼓動が伝わる。翔太は抵抗しかけ、でも椎奈の温もりに溶ける。「椎奈、ダメだよ……デートが」。
「キャンセルして。私と一緒にいて」椎奈は翔太の耳元で囁き、首筋に息を吹きかける。翔太の体が震える。椎奈はさらに手を滑らせ、翔太の背中を抱く。「覚えてる? 子供の頃、怖い夢見た時、私のベッドに潜り込んだこと。あの安心感、今も与えられるよ」。
翔太の理性が揺らぐ。美咲の顔が浮かぶが、椎奈の香りがそれを掻き消す。椎奈は翔太の唇に自分の唇を重ねた。優しく、深く。翔太は目を閉じ、応じる。甘いキス。双子の絆が、禁断の色を帯びる。
キスが途切れ、椎奈は微笑む。「翔太、私を選んで。美咲さんより、私の方があなたを幸せにできる」。
翔太は息を荒げ、頷く。「椎奈……ごめん、美咲に連絡する。今日は行かない」。
椎奈の心が喜びに満ちる。スマホを渡し、翔太はキャンセルのメッセージを送る。椎奈は翔太の頭を胸に引き寄せる。「いい子ね。今日から、また私たちだけの時間」。
午後、二人はソファで寄り添った。椎奈は翔太の髪を撫で、昔話を語る。翔太は椎奈の膝に頭を乗せ、目を閉じる。嫉妬は勝利に変わり、愛が満たす。椎奈の愛は重く、翔太を包む。背徳の影があっても、二人の世界は甘く温かかった。
夕暮れ、窓からオレンジの光が差し込む。椎奈は翔太の手を握り、誓う。「ずっと一緒よ。誰にも渡さない」。
翔太は微笑み、椎奈の肩に寄りかかる。「うん、椎奈がいるから、俺は幸せだ」。
双子の絆は、新たな形へ。椎奈の重い愛が、翔太を優しく縛る。美咲の影は消え、二人の甘い時間が続く。椎奈の勝利は、愛の深さの証だった。

