「お前の母ちゃんすげェ良かったよ。3」

「お前の母ちゃんすげェ良かったよ。3」
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お前の母ちゃんすげェ良かったよ。3
息子の帰省がもうすぐだってのに、ハルコは斎藤に誘われて温泉旅行に出かけた。最後の思い出だって、そう自分に言い聞かせてたはずだ。息子がいない間だけ、って割り切ってた関係なのに、終わらせるつもりだったのに、結局その後も続いちまって、もう抗う気力すら残ってなかった。斎藤の誘いが来るたび、断れなくなってる自分に気づいて、ため息混じりに荷物をまとめたよ。
山奥の秘湯、って看板に書いてあった宿に着いたのは夕方近く。車から降りて、木々が密集した道を歩いてると、硫黄の匂いがふわっと鼻をくすぐる。宿の人はにこやかで、部屋に案内されてすぐ、斎藤が「混浴なんだってさ」って耳元で囁いた。ハルコは一瞬、えっ?って固まったよ。混浴なんて、想像したこともなかった。恥ずかしいし、危ないんじゃないの?って思ったけど、宿の人が「今は客少ないから、ほとんど貸切ですよ」って笑うもんだから、ちょっと安心した。息子が帰ってくる前に、こんな贅沢な時間、悪くないかもって、自分を言い聞かせた。
脱衣所で服を脱いで、タオルを体に巻いて湯殿に出た。露天風呂は岩に囲まれてて、湯気が立ち込めてる。誰もいない。ハルコはそっとタオルを外して、熱い湯に肩まで浸かった。ああ、気持ちいい。日常の疲れが溶けていくみたい。斎藤も隣に入ってきて、肩を寄せてくる。いつものように、軽く触れ合って、笑い合う。息子がいないこの時間だけ、って思いが強くなって、ちょっと切なくなるけど、それも心地よかった。
でも、突然ドアが開く音がした。ハルコはびっくりして体を縮めたよ。入ってきたのは三人、地元の男たちみたい。作業着っぽい服を脱いで、タオル姿でぞろぞろ。宿の人が言ってた貸切状態、どこ行ったんだろう。ハルコは慌ててタオルを胸に押し当てたけど、湯の中で隠すのも限界がある。斎藤は平気な顔で「どうも」って挨拶してる。男たちは少し驚いた顔したけど、すぐに笑って湯に浸かった。
若いほうの、山下って名乗った青年は、細くて気の弱そうな感じ。目が合うたび、ぺこぺこ頭下げてくる。ガタイのいい年上の庄司さんは、筋肉質で声がでかい。穏やかそうな中年のケンさんは、にこにこしながら湯加減を聞いてくる。旅行客と地元民の他愛ない会話が始まったよ。「この辺、秘湯だって聞いたんですけど、ほんとに効くんですか?」って斎藤が振ると、庄司さんが「ああ、肩こりにいいぜ。俺ら毎日来てるようなもんだ」って笑う。山下は恥ずかしそうに「俺、初めてじゃないけど、緊張しちゃって」って小声で。ケンさんが「まあ、ゆっくり浸かれよ」って優しくフォロー。
会話は普通だった。天気のこと、近くの山の話、仕事の愚痴。でも、ハルコは肌で感じてた。あいつらの視線が、熱いんだ。無邪気な笑顔の奥に、剥き出しの好奇心がちらちら見える。山下がチラチラこっち見て、すぐに目を逸らす。庄司さんの視線は堂々としてて、体を舐めるように。ケンさんは穏やかだけど、目が笑ってないときがある。ハルコの心臓がどきどき鳴る。体が湯の熱じゃなく、別の熱で火照ってくる。昔なら、こんな視線に顔背けて、早く出たいって思ったはずだよ。でも今は違う。斎藤との日々が、体を染めちまった。普通の母親じゃなくなってる自分に、気づいてた。
会話が弾む中、斎藤が唐突に言ったんだ。「俺ら、セフレなんですよー」って。ハルコは耳を疑った。え、何言ってんの?って心の中で叫んだよ。男たちが一瞬沈黙して、そしたら庄司さんが「マジかよ」って大笑い。山下が顔赤くして、ケンさんが「へえ、羨ましいな」って穏やかに。関係が、誤解のしようなくバレちまった。ハルコは恥ずかしくて、湯の中で体を縮めた。混乱する頭の中、でもどこかで興奮してる。視線が一気に濃くなって、空気が重くなる。男たちの目が、好奇心から何か別のものに変わっていくのを感じた。
ハルコは抗えなかった。いや、抗いたくなかったのかも。斎藤の隣で、湯に浸かったまま、視線を受け止めてた。体が熱く疼く。息子の帰省を前に、最後の思い出のはずが、こんなことに。山下の恥ずかしそうな視線が、意外と熱っぽい。庄司さんの堂々とした目が、圧倒する。ケンさんの穏やかな笑顔の奥に、欲が隠れてる。会話は続いてるけど、みんなの声が少し低くなる。「お姉さん、きれいだね」って山下が小声で。ハルコは頷くしかなくて、斎藤が肩を抱いてくる。心地いい、って思っちまう自分が怖い。
湯気が立ち込める中、ハルコの体はもう普通じゃなかった。斎藤との関係が、こんな状況すら楽しみに変えちまってる。男たちの視線に飲まれていく。恥ずかしいのに、ざわめく心と熱い体。かつての自分なら逃げてたのに、今はここにいたいって思う。息子が帰ってくるまで、って言い訳が、どんどん薄れていく。
夜が深まって、男たちはまだ湯に浸かってた。会話はもっとプライベートに。庄司さんが「セフレって、どんな感じ?」ってストレートに聞く。斎藤が笑って答える中、ハルコは黙って聞いてた。視線が体を這うみたい。山下が近くに来て、湯の中で足が触れそう。ケンさんが「リラックスしてるね」って。ハルコの体は反応しちまう。熱い湯と、熱い視線。もう、戻れないかも。
宿に戻る頃、ハルコはふらふらだった。斎藤に支えられて部屋へ。鏡に映る自分、頰が赤い。普通の母親の顔じゃない。息子の顔が頭に浮かぶけど、それすら遠い。斎藤が耳元で「楽しかっただろ」って。ハルコは頷くしかなかったよ。
翌朝、チェックアウトの時、男たちとまた会った。山下が恥ずかしそうに挨拶、庄司さんがウィンク、ケンさんが「また来てね」って。ハルコの心はざわついたまま。車に乗って帰る道中、斎藤が「次はいつ?」って。ハルコは答えないけど、体が正直だ。息子が帰ってくるのに、こんな自分。抗う気力、ほんとにないのかも。
家に着いて、息子の部屋を見て、胸が痛む。でも、体に残る熱が消えない。あの混浴の記憶、視線、会話。すべてが、ハルコを変えちまった。普通の生活に戻れるのか、わからない。斎藤からのメッセージが来るのを、待ってる自分に気づいて、ため息をつくよ。

