「催●イヤホン -生意気女を常識改変-」
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「キモっ、何ジロジロ見てるんですか」
今年40歳を迎える教師・山中景男は、恋愛経験が全くなく、地味で冴えない容姿のせいで生徒たちから「キモ山」と陰で呼ばれ、馬鹿にされ続けていた。特に、校内でも人気の高い優等生・冬風冷奈からは徹底的に見下され、その冷たい視線と鋭い言葉が山中の心に深い傷を刻んでいた。冷奈はいつも完璧な成績を誇り、クラスメートたちからも憧れの的だったが、山中に対してだけは容赦なく蔑みの態度を取った。授業中も、彼女の視線が自分を射抜くたび、山中は胸の奥に溜まる鬱憤を感じずにはいられなかった。
「胸が大きいだけの生意気な女の分際で、偉そうにしやがって……」
そんなある日、山中はいつもの日課として、密かに撮影した動画を自宅で眺めていた。学校の様子をこっそり記録する習慣は、彼のささやかなストレス発散法だった。画面をスクロールしていると、偶然にも冷奈の姿が映り込んでいるシーンを発見した。そこに彼女の口から漏れた言葉は、山中にとって衝撃的な事実だった。
――自分が担当する山中の授業中に、片方のイヤホンで別の音声を流し、効率よく他の科目を勉強しているというのだ。
これまで散々コケにされ、溜め込んでいた怒りが一気に爆発した山中は、なんとかこの女に復讐できないかと必死に画策し始めた。夜通しインターネットを漁り、さまざまな情報を集める中で、ついに怪しげなサイトに辿り着いた。
「なんだこれ……音声による催眠効果の研究レポート?」
そこには、特定の周波数やリズムの音声が人間の意識に影響を与え、暗示を植え付ける可能性についての詳細な報告が記されていた。科学的な根拠は薄いように見えたが、山中には画期的な閃きが訪れた。冷奈が授業中にイヤホンを使っているという弱点を逆手に取り、彼女のイヤホンに細工を施せば、特別に作成した催眠音声を流して、自分に都合の良い存在へと少しずつ改変できるのではないか。
山中は早速、必要な機材を揃え、音声ファイルを慎重に編集した。復讐の計画は着々と進み、翌日の授業でチャンスを狙うことにした。冷奈がいつものように席に着き、イヤホンを耳に挿す瞬間を想像するだけで、山中の胸は高鳴った。
「見てろよ、冷奈。必ず後悔させてやる」
こうして、山中の暗い企ては静かに動き出した。学校という日常の舞台で、誰も気づかないところで、教師と生徒の関係は歪んだ方向へと進み始めるのだった。

