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▶【新刊】「隣人がギャルママってサイコーじゃな〜い?」Umour

「隣人がギャルママってサイコーじゃな〜い?」

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隣人がギャルママってサイコーじゃな〜い?

隣人が元ヤンのシングルギャルママで人生がバグった件。

俺は大学三年生、二十一歳。実家を出て一人暮らしを始めて一年が過ぎた。古びたアパートの二階、六畳一間に住む俺の隣——同じ階の角部屋——に、彼女はいた。

名前は美咲さん。二十八歳。娘の莉奈ちゃんは六歳で、近所の幼稚園に通っている。美咲さんは金髪のロングヘアを緩く巻き、いつも派手めなネイルを光らせている。化粧は濃いけれど、笑うと目尻にできる皺が優しい。元ヤンだったという過去は、時折見せる鋭い視線や、肩に入った小さなタトゥーから想像できる。でも今は、コンビニの夜勤と、昼間の内職で生計を立てるシングルマザーだ。

初めて会ったのは入居して三日目の夜だった。俺がゴミ捨て場で缶を分別していると、向こうから「ちょっと待って」と声がした。振り返ると、美咲さんがゴミ袋を片手に立っていた。黒のタンクトップにデニムのショートパンツ、足元はビーチサンダル。莉奈ちゃんはもう寝ているらしく、一人で出てきたらしい。

「ゴミの日は月水金だよ。新入りさん?」

「は、はい。今日引っ越してきたばかりで……」

「ふーん。じゃあ覚えといて。間違えると管理人がうるさいから」

そう言って笑った。その笑顔が、妙に頭に残った。

それから数週間、挨拶程度の関係だった。エレベーターで一緒になる。階段ですれ違う。莉奈ちゃんが「おにーちゃん!」と駆け寄ってくることもあった。美咲さんはいつも「莉奈、迷惑かけないで」と言いながら、俺の顔を見て小さく微笑む。

きっかけは、ある蒸し暑い夏の夜だった。

俺が部屋でレポートを仕上げていると、壁を叩く音がした。続いてドアをノックする音。開けると、美咲さんが顔を覗かせていた。白いキャミソールに、短いスウェット。髪は無造作に束ねて、化粧も落としている。

「ごめん、急なんだけど……」

「どうしました?」

「ゴキブリが出たの。莉奈が怖がって……殺虫剤切らしちゃって」

俺は反射的に頷いた。虫は苦手じゃない。部屋にあった新聞紙を丸めて、隣の部屋へ。

莉奈ちゃんはベッドの上で毛布にくるまっていた。美咲さんが「ほら、お兄さんが助けてくれるって」と宥める。俺はキッチンの隅に潜む黒い影を見つけ、一撃で仕留めた。美咲さんは「さすがー!」と手を叩いた。莉奈ちゃんは「ありがとう」と小さな声で言って、また眠りについた。

「悪いね、夜遅くに」

「いえ、俺も起きてたんで」

美咲さんは冷蔵庫から缶ビールを出してきた。俺は遠慮したが、「お礼だから」と押し切られた。狭いリビングで、二人で缶を空ける。莉奈ちゃんの寝息が聞こえる中、会話が弾んだ。

「大学生なんだっけ? 彼女とかいるの?」

「い、いません」

「ふーん。モテそうなのに」

「そんなことないです」

美咲さんは笑った。缶をテーブルに置き、俺の顔をまじまじと見る。

「ウブな子、好きだよ。私」

その一言が、すべての始まりだった。

翌日から、交流が増えた。朝のゴミ捨てで会えば、必ず声をかけてくる。莉奈ちゃんの送り迎えに付き合わされる。夜、俺が帰宅すると「ご飯まだ?」と誘われる。美咲さんの手料理は、見た目は派手だけど味は優しい。唐揚げはレモンを効かせて、ポテトサラダには隠し味にマスタード。莉奈ちゃんは「ママのご飯、おいしいでしょ?」と得意げだ。

距離が縮まるにつれ、美咲さんの素顔が見えてきた。元ヤンだった頃の話は、笑いながら語る。「喧嘩っ早くてさ、でも負けたことないよ?」でも、莉奈ちゃんの前では決して荒い言葉は使わない。夜勤明けで疲れているのに、莉奈ちゃんの宿題を見てやる。俺がレポートで困っていると、参考書を貸してくれる。昔は不良だったくせに、意外と頭がいい。

でも、一番驚いたのは——彼女の「意地悪さ」だった。

ある朝、ゴミ捨て場で事件は起きた。

俺は寝ぼけ眼でゴミ袋を捨てに行った。Tシャツにジャージ、髪はボサボサ。美咲さんも同じタイミングで出てきた。いつものように「おはよー」と声をかける。すると彼女は、ゴミ袋を置く動作の途中で、ふと動きを止めた。

「あ……」

小さな声。俺は何かと思った。見ると、美咲さんのパジャマのボタンが一つ、外れていた。白い生地が少し開き、胸元が……。朝の冷たい風に、彼女は「あ、寒っ」と呟いた。でも、すぐに気づいたように俺を見る。

俺は——固まった。顔が熱い。視線を逸らそうとしたけど、遅かった。美咲さんは、くすっと笑った。

「あはは、ウブすぎ。かわい〜」

俺は慌てて「す、すみません!」と頭を下げた。すると彼女は、ゆっくりとボタンを直しながら、俺に近づいてきた。距離、五十センチ。朝の匂いと、彼女の香水が混じる。

「……困ってるなら、手伝おっか?」

耳元で囁かれた。息が首筋にかかる。俺は、返事ができなかった。美咲さんは、満足したように笑って、ゴミ袋を捨てた。そして振り返り、指を一本、唇に当てた。

「内緒だよ?」

その日から、俺の日常は完全にバグった。

美咲さんは、意地悪だった。朝の挨拶で、わざと俺の腕に触れる。エレベーターで二人きりになると、背中に手を回す。莉奈ちゃんが寝た後、俺を部屋に呼んで「勉強教えて」と言いながら、膝の上に座る。俺が真っ赤になると、「かわいい」と笑う。でも、時々——本当に時々だけ——彼女も照れる。

ある夜、俺がレポートを手伝ってもらっているときだった。美咲さんが、ふと真顔になった。

「ねえ、私……変かな?」

突然の問いに、俺は戸惑った。

「変じゃないです。すごく、素敵です」

「でも、私、年上だし、子供もいるし……元ヤンだし」

「そんなの、関係ないです」

美咲さんは、目を伏せた。そして、小さな声で言った。

「……ありがとう」

その瞬間、俺は確信した。この人は、強がっている。でも、本当は——誰かに甘えたいんだ。

それから、俺たちは「隣人以上」を始めた。手を繋ぐ。ハグする。キスは、まだ。でも、毎日の距離が、どんどん近づいていく。莉奈ちゃんは「おにーちゃん、ママのこと好き?」と聞いてくる。俺が頷くと、にっこり笑う。美咲さんは「莉奈!」と怒るけど、顔は赤い。

俺の人生は、バグった。でも、このバグ——最高だ。

童貞大学生と、元ヤンギャルママ。

甘くて、意地悪で、癖になる。

隣人ラブで、俺の世界は、完全に狂った。

でも、狂ってもいい。

だって、隣に——サイコーの人がいるから。