「クラスで隠れ人気の広瀬さんがグイグイくるっ!」



「クラスで隠れ人気の広瀬さんがグイグイくるっ!」
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クラスで隠れ人気の広瀬さんがグイグイくるっ!
文化祭の余韻がまだ残る十月の夕暮れ。教室の黒板には、クラス全員の名前が書かれた模造紙が貼られ、片付けの喧騒がようやく収まった頃だった。俺、夏目拓海は、いつものように隅っこでノートをまとめていると、突然、クラスのギャルグループのリーダー格、佐藤美咲に声をかけられた。
「ねえ夏目くん! 文化祭の打ち上げ、やらない? みんなでカラオケ行こうよ!」
美咲の笑顔は眩しくて、断る言葉が喉に詰まる。ギャルグループの誘いなんて、俺みたいな地味な存在には縁遠いはずだ。なのに、なぜか断れなかった。しぶしぶ頷くと、彼女たちは歓声を上げて俺の手を引っ張っていった。
カラオケボックスに着くと、予想外の光景が広がっていた。男は俺だけ。残りはギャルグループの女子たちと、そして――クラスで誰もが認める人気者の広瀬あかりさん。長い黒髪をなびかせ、透明感のある笑顔でみんなをまとめ上げる彼女は、まるで別世界の住人だ。俺はそんな彼女たちに囲まれ、緊張で声が裏返りそうになる。
「夏目くん、来てくれて嬉しい! 文化祭お疲れさま!」
あかりさんが隣に座り、柔らかい声で話しかけてくる。彼女の香水の甘い香りが鼻をくすぐり、俺は慌てて視線を逸らした。歌が始まり、みんなで盛り上がる中、俺はただ頷くことしかできない。慣れない空間に居心地が悪くなり、トイレを口実に抜け出そうとした瞬間――。
「夏目くん、ちょっと手伝ってくれる?」
あかりさんに腕を掴まれ、個室の奥へと連れ込まれた。ドアが閉まると、そこはもう二人きりの世界。薄暗い照明の下、彼女の瞳がいつもより近く感じる。
「なんだか暑くなってきたね……服、脱いじゃおうかな」
「え……?」
唐突な言葉に、俺の心臓が跳ね上がる。あかりさんは悪戯っぽく微笑みながら、ゆっくりと上着のボタンを外していく。白い肌が露わになり、俺の視線は自然とそこに吸い寄せられる。彼女の指先が俺のシャツに触れ、熱い吐息が耳元にかかる。
「夏目くん、ずっと見てたんでしょ? 文化祭の準備のとき、私のこと」
彼女の声は甘く、誘うように響く。俺は抵抗する言葉を失い、ただ彼女の動きに身を任せるしかなかった。個室のソファに押し倒され、彼女の柔らかな体温が全身に伝わる。唇が重なり、息が混じり合う。汗が滲み、熱がこもる。時間は溶けるように過ぎ、二人だけの秘密の時間が永遠に続くかのようだった。
どれだけ時間が経っただろう。息を切らせながら、あかりさんが俺の胸に頬を寄せる。
「はぁ……はぁ……夏目くん……私ね……」
彼女の声は震えていた。いつも明るくみんなを引っ張る彼女の、初めて見る弱さ。俺はそっと彼女の髪を撫でる。
「実は……文化祭の準備のときから、夏目くんの真剣な顔見てて……ドキドキしてたの。地味だと思ってたけど、実は一番かっこいいって気づいちゃって……」
彼女の告白は、汗と涙で濡れた頬と共に零れた。俺は驚きながらも、胸の奥が熱くなるのを感じた。こんな俺を、彼女が――。
「だから、今日みんなを誘ったの。夏目くんと二人きりになりたくて……」
あかりさんの笑顔は、いつもの輝きを取り戻していた。俺たちは再び抱き合い、夜のカラオケボックスで、誰も知らない秘密を共有した。
青春の甘酸っぱさと、熱い衝動が交錯する夜。文化祭の打ち上げは、俺たちの新しい始まりになった。

