真夏の太陽が、砂浜を照りつける。眩しい光に目を細めながら、私は波打ち際を歩いた。砂は熱を持ち、足の裏をじりじりと焼いていた。どこまでも続く青い海は、どこまでも澄み渡り、まるで宝石箱の中に閉じ込められた宝石のようだった。
子供の頃から、私は海が大好きだった。夏の暑さを忘れさせてくれる、涼やかな潮風。波の音は、私を心地よい眠りに誘ってくれる。そして、何よりも、この広大な海を見ていると、心が洗われるような気がする。
今日は、一人で海に来た。いつものように、賑やかな海水浴場ではなく、少し離れた静かな浜を選んだ。ここに来ると、周りの目を気にせず、自分のペースで過ごすことができる。
砂浜に腰を下ろし、本を開いた。ページをめくる度に、心地よい風が髪をなでる。物語の世界に浸りながら、私は現実を忘れてしまう。
しばらくすると、どこからともなくギターの音色が聞こえてきた。音源を探すと、少し離れたところで、若い男がギターを弾いていた。彼は、青い空に向かって、伸びやかな歌声を響かせていた。
彼の歌声は、私の心を揺さぶった。どこか懐かしいメロディーは、私の心の奥底に眠っていた記憶を呼び覚ますようだった。
私は、彼の歌声に引き寄せられるように、彼の近くまで行った。彼は、私の気配を感じて、演奏を中断した。
「素敵な歌ですね」
そう言うと、彼は少し照れながら笑った。
「ありがとうございます。ただ、気分転換に歌っているだけです」
彼は、そう言いながら、再びギターを弾き始めた。
私たちは、しばらくの間、一緒に夕焼けを眺めた。彼は、東京から来たという。都会の喧騒に疲れて、この海にたどり着いたのだそうだ。
「海はいいですね。ここに来ると、心が安らぎます」
彼は、そう言いながら、遠くを見つめた。
「僕もそう思います」
私は、彼の言葉に共感した。
夕焼け空は、刻々とその色を変えていった。オレンジ色、ピンク色、そして、最後は深い紫色に。
「もうこんな時間か」
彼は、時計を見て、そう言った。
「明日も、また来ますか？」
私は、そう尋ねた。
「そうですね。また、ここに来れたらいいな」
彼は、そう言って、笑顔を見せた。
私たちは、再び静かにギターの音を聴きながら、夜が来るのを待った。
夜空には、無数の星が輝いていた。私は、この美しい星空の下で、彼と出会えたことに感謝した。
明日、彼は故郷へ帰るという。私たちは、きっともう会うことはないだろう。でも、この日のことを、私は一生忘れないだろう。
真夏の浜辺で、私は大切な思い出を作った。
私は、再び一人で砂浜を歩いた。波の音を聞きながら、私は未来に向かって歩き始めた。