「田舎娘ってナメとったら痛い目みるけんね!!〜気の強い田舎娘、都会ちんぽに敗北〜」



「田舎娘ってナメとったら痛い目みるけんね!!〜気の強い田舎娘、都会ちんぽに敗北〜」
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夏休み明けの九月、教室の空気はまだ蝉の声と汗の匂いが残っとった。
「転校生が来るらしいよ」って誰かが言うたときも、ウチは別にどうでもよかった。田舎の公立なんか、年に一回あるかないかのイベントやし、すぐに馑慣れて溶け込むか、浮いたまま卒業するか、どっちかやろ、と思っとった。
ところが。
朝のホームルーム直前、教室の引き戸が静かに開いて入ってきた男は、まるで別の世界から迷い込んだみたいだった。
髪はさらっと整えられとって、制服の着こなしが妙にこなれとる。ネクタイはゆるめやけど、それが逆に大人っぽい。肌は日焼けしとらんし、指先まで綺麗で、都会の匂いがプンプンしとった。女子の何人かは「あ、カッコいい……」って小声で囁きよった。ウチは正直、ちょっと胸がざわついた。
名前は佐久間悠斗。東京の私立から親の転勤で来たらしい。
最初の数日は、みんなが遠巻きに様子見しとった。けど、明らかに浮いとる。休み時間も一人で窓際におって、スマホばっかりいじくっとる。誰も近寄らん。
……それがなんだか腹立たしかった。
ウチは昔から、クラスの端っこにいる奴を見過ごせん性分や。うちの町をバカにされとる気がして、黙っとられん。
昼休み、ウチは弁当持って佐久間の席に近づいた。
「ねえ、東京の人」
佐久間がゆっくり顔を上げた。目が合う。綺麗な目やな、と思った瞬間、アイツはため息まじりに言った。
「早く東京に帰りたい」
……は?
一瞬、頭が真っ白になった。
帰りたい?
この町がそんなに嫌か?
海も山もあるし、夜は星が降ってきそうなくらい綺麗やし、みんな顔見知りで温かいし、飯もうまいのに?
ウチ、笑顔のまま弁当箱を机に置いて、にっこり言った。
「ふーん、そうなん。じゃあ、帰る前にちょっくらこの町のええとこ、教えてあげよっか?」
佐久間は「別にいいよ」って冷たく返したけど、ウチはもう決めた。
こいつに、田舎娘をナメたら痛い目見るってことを、身体でわからせてやる。
放課後、ウチは半ば強引に佐久間を誘った。
「今日はウチんち来らん? 母ちゃんが新鮮な魚さばいとるけん、刺身食べてって」
断られたけど、無視してチャリのカゴにアイツの鞄突っ込んで、先に漕ぎ出した。
うちの家は町はずれの古い民家で、縁側が広うて、夏でも風が気持ちええ。母ちゃんは驚いた顔したけど、すぐに笑顔で迎えてくれた。
夕飯の後、ウチは佐久間を裏山に連れ出した。
「ほら、見てみ。星、めっちゃ近くない?」
暗い山道を手探りで歩きながら、ウチは得意げに空を指さした。
佐久間は黙ってついてきて、ふと口を開いた。
「……確かに、綺麗だな」
その声が少しだけ柔らかかった気がして、ウチ、ちょっと勝ち誇った。
次の日も、その次の日も、ウチは佐久間をいろんなとこに連れ回した。
川で泳いだり、畑でスイカ盗んで食ったり(おじいちゃんには怒られた)、夜の神社で肝試ししたり。
最初は「めんどくさい」ばっかり言うとった佐久間が、少しずつ笑うようになった。
ある日、ウチが「次は海に行こう!」って言ったら、アイツ、初めて自分から「いいな」って言った。
……ここまでが、ウチの完全勝利やったはずやった。
なのに。
なのに、いつからか、風向きが変わった。
海に行くって言った日、ウチはいつもの水着に短パンを穿いて、チャリで待ち合わせ場所に行った。
佐久間はもう来とって、Tシャツ一枚で立っとった。
「遅い」
「ごめんごめん、母ちゃんに捕まって」
ウチが笑いながら近づいたら、アイツ、急に真顔になってウチの手を掴んだ。
「な、なんよ?」
「……お前、ほんと無防備だよな」
その声が低くて、いつもと違った。
海は貸し切り状態で、波の音だけが響いとった。
二人で沖まで泳いで、疲れて砂浜に寝転がったとき。
空がオレンジに染まりよる。
ウチが「ほら、今日も楽しかったやろ?」って言ったら、佐久間が横に寝転んだまま、ウチの顔をじっと見た。
「……お前、ほんと可愛いよな」
急に言われて、心臓が跳ねた。
「は? 急に何?」
「最初から思ってた」
アイツの手が、ゆっくりウチの頬に触れた。
熱い。
砂浜の熱とは違う、別の熱。
ウチは逃げようとしたけど、身体が動かんかった。
「や、やめ……」
言葉の途中で、唇を塞がれた。
波の音が遠くなって、頭の中が真っ白になった。
……あれから、ウチの負けやった。
佐久間はウチが思っとったより、ずっと強引で、ずっと優しくて、ずっとズルかった。
田舎娘をナメるなって言ったのは、ウチの方やったのに。
結局、都会の甘い誘いに、ウチはあっさり落ちてしもた。
夏の終わり、佐久間がまた東京に帰るって言ったとき。
ウチ、泣きそうになったけど、笑って言った。
「また来てよ」
アイツはニヤリと笑って、ウチの耳元で囁いた。
「来年も、お前んち泊まりに行っていい?」
……もう、こいつのペースや。
田舎娘ってナメたらいかんって、ほんとに痛い目見たのは、ウチやったみたい。

