1. 作品概要
「もう一度、してみたい。」は、漫画家・だにまるによる成人向けコミックで、2025年2月13日にジーオーティーから発売の単行本です。初単行本「この恋に気づいて」で注目を集めただにまるの2作目となる本作は、雑誌「comicアンスリウム」に掲載された同名作品を中心に、積極的なヒロインたちが織りなすラブストーリーとエロティックなシーンを収録した作品集です。単行本には表題作「もう一度、してみたい。」をはじめ、「まだまだ、してみたい。」「恋になるまで、」「Petunia」「Petunia ~after story~」「恋の進め方」「悪い子の躾」といった短編が含まれています。
本作の主人公は、強気なOL・犬上結奈(いぬがみゆな)とその同僚・猿島勇斗(さるしまゆうと)。職場で犬猿の仲として知られる二人が、酔った勢いでラブホテルに流れ着き、予想外の「気持ちいい一夜」を経験したことから物語が展開します。普段は衝突ばかりの二人ですが、身体の相性の良さに惹かれ、再び関係を深めていく過程が描かれています。だにまる特有の「積極的なヒロイン」と「ツンデレ要素」が融合した本作は、エロ漫画ファンだけでなく、ラブコメ好きにも訴えかける魅力を持っています。
2. ストーリーの魅力:喧嘩と情熱の絶妙なブレンド
「もう一度、してみたい。」の最大の魅力は、喧嘩から始まる関係性が徐々に甘い情熱へと変化していくストーリー展開です。物語は、結奈と猿島が会議で激しく対立するシーンからスタート。彼女の強気な態度と彼の反発が火花を散らす様子は、「この二人がくっつくなんてありえない!」と思わせるほど。しかし、居酒屋での口論がエスカレートし、酔った勢いでラブホテルにたどり着くという展開は、読者を一気に引き込みます。
特に面白いのは、二人がラブホテルで目覚めた後、「どうしてこうなったか覚えていないけれど、めっちゃ気持ちよかった」という共通の感覚に戸惑いながらも認め合う場面。この「記憶はないけど身体が覚えている」という設定が、物語にユーモアと緊張感をもたらしています。そして、「あの快感をもう一度味わいたい」という衝動が二人を再び近づけるきっかけとなり、喧嘩仲間から恋人へと変わっていく過程が丁寧に描かれています。
このストーリーは単なるエロティックな展開に留まらず、二人の感情の揺れや葛藤がしっかりと描かれている点で秀逸です。結奈の「気持ちよすぎて動けない」という言葉や、普段は強気な彼女が猿島に主導権を握られるシーンは、キャラクターの内面が垣間見える瞬間であり、読者に感情移入を促します。一方で、猿島の「結奈を負かしたい」という対抗心が情熱に変わる瞬間も見逃せません。喧嘩と情熱が交錯するこのバランスが、本作を単なるエロ漫画以上の深みある作品に仕立てています。
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3. キャラクターの特徴:強気と不器用さのギャップ
本作のキャラクターは、だにまるの得意とする「積極的で強気なヒロイン」と「それに振り回される男性」の構図を踏襲しつつ、それぞれに独自の魅力が加えられています。
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犬上結奈(いぬがみゆな)
主人公の結奈は、巨乳で自信満々のOL。職場ではバリバリ仕事をこなし、会議でも猿島と真っ向からぶつかる強気な性格が特徴です。しかし、恋愛や性的な場面では不器用さが垣間見え、そのギャップが非常に魅力的。たとえば、ラブホテルでの初体験後、「気持ちよすぎて動けない」と漏らすシーンでは、普段の勝気さが影を潜め、照れや戸惑いが表れる。この「強さと脆さ」の両立が、彼女を単なるエロ漫画のヒロインではなく、リアルで愛らしいキャラクターにしています。 -
猿島勇斗(さるしまゆうと)
結奈の同僚である猿島は、彼女と対立する頑固な性格の持ち主。結奈に負けたくないという対抗心が強く、口論では一歩も引かない姿勢を見せます。しかし、性的な場面では結奈にリードされることが多く、彼女の積極性に翻弄されつつも応えていく姿が描かれています。特に、結奈の騎乗位に火がついて激しくなるシーンでは、彼の「負けず嫌い」が情熱に転換する瞬間が印象的です。
この二人の掛け合いは、単なる肉体関係を超えて、お互いを認め合うプロセスとして機能しており、読者に「この二人、実は相性抜群じゃないか」と感じさせます。
4. 作画スタイル:美麗で情感豊かな描写
だにまるの作画は、本作でもその実力を遺憾なく発揮しています。キャラクターの表情や体のラインは非常に丁寧に描かれており、特に結奈の豊満な体型や動きのあるポージングが目を引きます。エロティックなシーンでは、柔らかなタッチとダイナミックな構図が絶妙に組み合わさり、読者を興奮させる一方で美しさも感じさせます。
例えば、結奈が「ゆっくり焦らす騎乗位」を繰り出す場面では、彼女の表情や体の動きが細かく描かれ、快感と葛藤が伝わってくるよう。また、背景や小物の描写も手抜きがなく、ラブホテルの雰囲気や居酒屋の喧騒がストーリーにリアリティを与えています。だにまるの絵柄は、成人向け漫画にありがちな過剰な誇張を避けつつ、情感とエロスを両立させるバランスが秀逸です。
5. エロティックな要素とストーリー性のバランス
成人向け漫画として、「もう一度、してみたい。」はエロティックなシーンの質と量に妥協がありません。表題作では、結奈と猿島の初体験から再挑戦に至るまでのセックスシーンが複数回描かれ、それぞれに異なる感情や状況が反映されています。特に、結奈が主導権を握るシーンと、猿島が応戦する形で激しくなるシーンのコントラストが秀逸で、単調になりがちなエロ描写に変化をもたらしています。
しかし、本作の真価はエロティックな要素とストーリー性のバランスにあります。単に肉体的な快楽を描くだけでなく、二人の関係性が進展する過程が丁寧に織り込まれているため、エロシーンが物語の流れの中で自然に感じられるのです。たとえば、再びセックスをすることになった二人が、行為を通じてお互いの気持ちを確認し合う場面は、エロスを超えたラブストーリーとしての感動を与えます。この点で、本作は成人向け漫画の中でも「読後感の良さ」を重視する読者に強くおすすめできます。
6. 総合的な感想:笑いとドキドキが共存する傑作
「もう一度、してみたい。」を読み終えた後、率直な感想として「笑えてドキドキして、最後には温かい気持ちになれる」と感じました。喧嘩ばかりの二人がラブホテルで目覚めるというコミカルな導入から、情熱的なセックスを経て和解に至る展開は、テンポが良く飽きさせません。だにまるの描く積極的なヒロイン像は本作でも健在で、結奈の強気さと不器用さが絶妙にマッチしています。
また、エロ漫画としての満足度が高い一方で、ラブコメとしてのストーリー性も楽しめるため、幅広い読者層に訴えかける作品と言えるでしょう。単行本に収録される他の短編も、積極的なヒロインたちが主役を務める内容が揃っており、だにまるファンにとっては見逃せない一冊です。
個人的には、結奈と猿島が「もう一度」を超えて「これからもずっと」関係を続けていく未来を想像してしまい、「この二人、幸せになってほしい!」と感情移入してしまいました。エロティックな要素を楽しみつつ、キャラクターの成長や絆を感じたい読者に、ぜひ手に取ってほしい作品です。
結論
「もう一度、してみたい。」は、だにまるの魅力が詰まった傑作です。喧嘩から始まる恋愛模様、美麗な作画、感情豊かなキャラクター、そしてエロスとストーリーの絶妙な融合――これらが一体となり、読者を満足させる一冊に仕上がっています。成人向け漫画の枠を超えた楽しさを求める方には必読の作品と言えるでしょう。