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『弟の身代わりになった姉3』diletta

『弟の身代わりになった姉3』

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『弟の身代わりになった姉3』

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第一章:突然の訪問者と、破滅の危機

都内のグラフィックデザイン事務所で働く千夏(ちなつ)は、女手一つで育ててくれた母を亡くして以来、歳の離れた弟の陸(りく)を守るためだけに生きてきた。不器用だが真っ直ぐな性格の陸は、千夏にとってかけがえのない家族であり、命に代えても守るべき存在だった。

しかし、その穏やかな生活は、ある雨の夜に突然打ち砕かれた。

激しくノックされるドアを開けると、そこには全身を震わせ、蒼白な顔をした陸が立っていた。陸はデザイン業界でも名高い大手クリエイティブ企業「ヴァンテック」から大きな仕事を請け負っていたが、クライアントとのトラブルにより、数千万円規模の膨大な損失を出してしまったのだという。

法的な責任を追及されれば、陸の未来は完全に閉ざされてしまう。混乱し、取り乱す陸を静かに抱きしめた千夏は、一つの決断を下した。

「陸、大丈夫よ。全部、私に任せなさい」

千夏は弟のポートフォリオと身分証明書類を手に取ると、ヴァンテックの最高経営責任者であり、業界で「氷の経営者」と恐れられる葛城(かつらぎ)のもとへと向かった。

千夏は弟の全ての失敗を自分が犯した責任であると偽り、身代わりとして葛城の前に立ちはだかったのだ。

第二章:氷の経営者と、従属の誓い

葛城の執務室は、都会の夜景を見下ろす最上階にあり、重苦しい緊張感が漂っていた。

流麗なスーツに身を包んだ葛城は、冷徹な視線で千夏を見下ろした。その鋭い瞳は、目の前に立つ女性が本当の当事者ではないこと、そして弟のために身代わりとしてやってきたことを瞬時に見抜いていた。

「……君がすべての責任を負うと言うのか? 提示された損害賠償の金額は、一人のデザイナーが一生かけても返せる額ではないぞ」

低く落ち着いた葛城の声に、千夏は身震いしながらも、まっすぐ彼の瞳を見つめ返した。

「はい。私はどのような処分でも受け入れます。私の身も、時間も、スキルも……すべて貴方に捧げます。ですから……どうか弟だけは許してください」

千夏の瞳に宿る、捨て身の覚悟と揺るぎない強い意志。葛城の口元に、微かな興味の色が浮かんだ。周囲の人間が自分の権力と威圧感に怯える中、自分をまっすぐ見つめ返し、家族のために自分を差し出す彼女の姿に、葛城はこれまでにない深い興味を抱いたのだった。

「いいだろう。君の覚悟を買おう。今日から君は、私の個人的な専属アシスタント兼デザイナーとして、この私に従ってもらう。期限は……私が満足するまでだ」

千夏は葛城の冷酷な契約を受け入れ、彼の従属下に入ることとなった。

第三章:不器用な庇護と、見え隠れする素顔

その日から、千夏の過酷な生活が始まった。

葛城のアシスタントとしての業務は多岐にわたり、早朝から深夜まで彼の過密スケジュールに同行し、過酷な要求に応え続ける日々。千夏は葛城を「冷酷で冷徹な支配者」だと信じ込み、いつか捨てられるのではないかという恐怖と戦っていた。

しかし、過酷な業務の合間に見せる葛城の態度に、千夏は少しずつ違和感を覚え始める。

深夜まで残業をする千夏のデスクに、さりげなく置かれた温かいカフェラテ。風邪をひいて体調を崩した際には、口では冷たい文句を言いながらも、高級な薬と栄養のある食事を手配し、千夏が眠りにつくまで静かに傍で見守っていたこと。

葛城は千夏を苦しめるどころか、彼女の才能を正当に評価し、一流のデザイナーとして育てるための厳しい指導を行っていたのだ。

「葛城さん……どうして私にここまでしてくれるんですか? 私はただの『身代わり』の賠償品なのに……」

ある夜、誰もいないオフィスで千夏が尋ねると、葛城は書類から目を離し、静かに千夏へと歩み寄ってきた。

「君は最初から身代わりなどになり得ていない。私が手に入れたかったのは、弟の賠償ではなく……あの雨の夜、自分を捨ててまで誰かを守ろうとした、君そのものだ」

第四章:解けた呪縛と、本当の選択

「え……?」

葛城は驚きで固まる千夏の華奢な肩を包み込み、ゆっくりと自分のもとへと引き寄せた。

「あのトラブルの損害は、すでに私が別の形で補填している。君が私に縛られる理由は、最初から無かったんだ」

葛城の口から明かされた真実。彼は千夏を自分の手元に置き、守るための口実として「身代わりの契約」を利用していたのだ。

「君は自由だ。今すぐここを去ってもいい。……だが、私としては、君にここにいてほしい。契約としてではなく、一人の女性として、私の隣に」

葛城の瞳に宿っていたのは、氷のような冷たさではなく、千夏を愛おしく想う熱い情熱だった。耳元で囁かれる彼の本音と、服越しに伝わる温かな体温。千夏の心の中にあった恐怖と葛藤は消え去り、いつしか葛城という男性に深く惹かれていた自分の本当の気持ちに気づかされた。

千夏は涙を浮かべながら、葛城の胸元にそっと顔をうずめた。

「私……どこにも行きません。葛城さんの隣に……ずっといさせてください」

「身代わり」という偽りの契約から始まった二人の関係。不器用な支配と守護の先に待っていたのは、誰よりも深く、温かな「本当の愛」だった。

葛城の手が千夏の背中を優しく抱きすくめ、都会の夜景の中で、二人は解けることのない強い絆で結ばれたのだった。

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