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【感想レビュー】漫画「執着点片道切符」いだ天ふにすけ先生の持ち味がフルに詰まった一冊。愛と執着、欲望と葛藤が絡み合った人間ドラマが好きな人には絶対刺さる

はじめに

みなさん、いだ天ふにすけ先生の最新単行本「執着点片道切符」が2025年2月28日に発売されたのをご存知ですか?「COMIC快楽天」でおなじみのこの作家さんの2冊目の単行本ということで、期待値はすでにMAX!私も発売日に手に入れて一気読みしましたが、その濃厚な情感と独特の世界観に完全にやられました。今回はこの作品の魅力をたっぷりお伝えしようと思います。さあ、一緒にいだ天ワールドに飛び込んでみましょう!
まず、この単行本のテーマを一言で表すなら「愛と執着の境界線」。公式のあらすじにもあるように、「大好き。愛してる。セックスしたい。一緒にいたい。離したくない。支配したい。許せない。」という言葉がすべてを物語っています。愛情が深いがゆえに、それが時に歪んだ形になって現れる――そんな人間の複雑な心の動きを、いだ天ふにすけ先生は見事に描き出しています。読んでいて胸が締め付けられる瞬間と、ゾクッとする瞬間が交互に訪れるんですよね。
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収録作品の多彩さと深み

「執着点片道切符」には全7作品が収録されています。それぞれのストーリーが独立している一方で、共通するのは「愛が執着に変わる瞬間」を捉えた視点。では、各作品の魅力を少しずつ紐解いていきましょう。
『そういう妖怪』
まず最初に登場するのが『そういう妖怪』。新人くんが女だらけの奇妙な職場に住み込み、エビ剥きの仕事をしながら異質な美女・カルオに惹かれていく話です。この作品、なんといってもカルオのミステリアスな魅力がすごい。彼女の美しさに新人くんが取り憑かれていく過程が、読者にもしっかり伝染します。特に、彼の所有欲がエスカレートしていく描写は、静かだけど不気味な緊張感があって引き込まれます。FANZA限定のおまけでこの作品のネームが収録されているのも嬉しいポイント。先生の創作過程を垣間見られるなんて、ファンにはたまらないですよね。
『大好き南雲くん』
次にくるのが『大好き南雲くん』。遠距離恋愛を乗り越えた森さんと南雲くんの再会を描いたエピソードです。付き合ってすぐ海外に行ってしまった南雲くんを、森さんが一途に待ち続ける姿が切なくて。4年ぶりに会えた二人が積もり積もった想いを爆発させるシーンは、読んでいて涙腺が緩みました。いだ天先生の描く愛情って、甘さだけじゃなくて苦さもちゃんと混ざってるから心に刺さるんですよね。この作品は比較的ハッピーな結末で、読後感も温かいのが素敵です。
『狐の雨宿り』
続いては『狐の雨宿り』。年上のセクシーな女性・純さんとの刹那的な関係を描いた作品です。単調な日常に現れた純さんとの刺激的な日々が、別れの予感とともに終わりを迎える……という展開が切ない。純さんの大人の色気と、主人公のどこか投げやりな感情が交錯する中で、セックスの描写がまたエロティックで美しいんです。終わりが近づくにつれて感じる寂寥感が、読んでいて胸に残ります。
『不束ながら』
幼馴染モノが好きな人には『不束ながら』が刺さるはず。要領が悪くてダメダメな下津を支えるすがもが、実は彼に深い執着を抱えているという話です。長年の関係で恋愛に発展しなかった二人が、あるきっかけで一線を越える瞬間がたまらない。すがもの内に秘めた重い感情が爆発するシーンは、読んでいてゾクゾクしました。いだ天先生のキャラって、表面的には普通に見えても内面がめっちゃ濃いんですよね。
『穴穴穴』
ちょっと異色なのが『穴穴穴』。スランプに陥ったラノベ作家・四十万が、熱狂的なファンの男と関係を持ってしまう話です。彼女の自暴自棄な気持ちと、男の盲目的な崇拝が交錯する展開が独特。最初は軽い気持ちで会ったはずなのに、どんどん深い関係に引きずり込まれていく感じがリアルで怖いくらい。この作品、執着の対象が「神さま」とまで言われる作家っていうのが新鮮でした。
『つづきの他人事』
姉弟の禁断の関係を描いた『つづきの他人事』も見逃せません。進学で一緒に暮らし始めた真央と姉が、過去の過ちを繰り返してしまう話です。「姉ちゃんとしてちゃんとしなきゃ」という理性と、抑えきれない欲望の間で揺れる姉の葛藤が丁寧に描かれていて、読んでいて苦しくなるほど。背徳感たっぷりの展開にハマっちゃう人も多いんじゃないでしょうか。
『手紙』
最後に収録されている『手紙』は、短いながらも強烈な余韻を残す作品。結婚を祝う手紙の中で、過去の秘密の関係を振り返る形式が斬新です。誰にも言えない想いを綴るその文面に、切なさと諦めが滲んでいて、読み終わった後にしばらく放心状態になりました。

いだ天ふにすけの魅力とは?

この単行本を読んで改めて感じたのは、いだ天ふにすけ先生の描くキャラクターの「人間らしさ」です。どのキャラも完璧じゃないし、むしろ欠点や歪んだ部分が目立つ。でも、それが逆にリアルで愛おしく感じるんですよね。愛情が執着に変わる瞬間って、誰にでも起こりうるじゃないですか。その危うい感情を、先生は繊細なタッチと濃密なストーリーで表現してくれるから、読んでいて共感と戦慄が同時に押し寄せてくるんです。
あと、単行本ならではの特典も見逃せません。巻末の描き下ろしショート漫画は、各作品の後日談的な雰囲気でほっこり。カバー下のおまけイラストとあとがきも、先生のユーモアや人柄が垣間見えて楽しいです。特にあとがきでは、作品に込めた思いが語られていて、読後の満足度がさらにアップしました。

読んでみての感想とおすすめポイント

正直、この単行本は「ただのエロ漫画じゃない」と声を大にして言いたいです。もちろんエロティックなシーンはたっぷりあって、その描写もめっちゃ綺麗で興奮するんですけど、それ以上にストーリーの深さがすごい。愛と執着、欲望と葛藤が絡み合った人間ドラマが好きな人には絶対刺さると思います。
個人的に一番好きなのは『大好き南雲くん』かな。遠距離恋愛の切なさと再会の喜びがバランスよく描かれていて、読んでいて幸せな気持ちになりました。でも、『そういう妖怪』の不気味な魅力や、『つづきの他人事』の背徳感も捨てがたい……って感じで、どの作品も甲乙つけがたい魅力があります。

最後に

「執着点片道切符」は、いだ天ふにすけ先生の持ち味がフルに詰まった一冊。愛が歪む瞬間をここまで美しく、かつ生々しく描ける作家さんはそういないと思います。アダルトコミックが好きな人はもちろん、ちょっと濃いめの恋愛漫画を読みたい人にもおすすめです。ぜひ手にとって、いだ天ワールドの深みにハマってみてください。私みたいに一気読みして、しばらく余韻から抜け出せなくなる覚悟でね!