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▶【新刊】「遅く生まれた君が悪い」ツクヨミ

「遅く生まれた君が悪い」

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物語は、都会の片隅にある古いアパートから始まる。主人公の佐藤美咲は二十五歳のイラストレーター。締め切りに追われ、夜通し原稿を描き続ける日々を送っている。ある晩、疲れ果ててベッドに倒れ込むと、夢の中で不思議な世界へ落ちていく。そこは、巨大な時計塔がそびえる街。針は逆回転し、時間が巻き戻されるように人々が若返っていく。

目覚めると、美咲は二十歳の自分に戻っていた。鏡に映る顔は、かつての瑞々しい肌と輝く瞳。だが、喜びは一瞬。街の人々は皆、十代後半から二十代前半の姿で、誰もが「遅く生まれた者」を嘲笑う空気が漂う。美咲は混乱する。なぜ自分だけが二十五歳の記憶を持っているのか。

街の中心で出会ったのは、二十二歳の青年、拓也。黒髪を無造作に伸ばし、鋭い目つきで周囲を観察している。彼は「時間管理局」の職員で、この世界のルールを知る数少ない人物だ。管理局は、遅く生まれた者――つまり、二十歳を超えてこの世界に迷い込んだ者を「罪人」として追う組織。美咲は即座に標的にされる。

逃亡劇が始まる。拓也は最初、冷徹に美咲を捕らえようとするが、彼女の必死な訴えに心を揺さぶられる。「私はただ、普通に生きてきただけ。遅く生まれたのが、そんなに悪いこと?」美咲の言葉が、拓也の過去を呼び起こす。彼自身、十九歳でこの世界に落ち、二十歳になる前に管理局に入局した。遅生まれの孤独を知る者同士、互いに惹かれ合う。

二人は街の外れ、廃墟となった工場へ隠れる。夜の闇に包まれ、星空の下で語り合う。美咲は二十五歳の人生を振り返る。仕事のプレッシャー、失恋の痛み、家族とのすれ違い。拓也は十九歳の頃の夢を語る。画家になりたかったが、時間の世界に囚われ、諦めた。互いの手を握り、温もりを確かめ合う中で、禁断の感情が芽生える。この世界では、年齢差が「罪」となる。遅生まれは、若者たちの純粋さを汚す存在とされる。

管理局の追手が迫る。リーダーは二十一歳のエリート、玲。彼女は完璧な若さを誇り、遅生まれを憎む。玲の過去は、十八歳で恋人を失ったこと。相手が二十歳を超え、強制的に世界から追放されたのだ。復讐心が彼女を駆り立てる。

クライマックスは時計塔の頂上。美咲と拓也は、時間を操る装置を破壊しようとする。戦いのさなか、拓也が重傷を負う。美咲は涙ながらに彼を抱きしめる。「遅く生まれたのは、私のせいじゃない。でも、あなたに出会えてよかった。」拓也は微笑み、装置を起動させる。世界が逆回転を止め、正しい流れに戻る。

目覚めると、美咲は元の二十五歳のアパートにいた。だが、机の上に一枚の絵。拓也が描いたと思われる、星空の下の二人の姿。現実と夢の境界が曖昧になる中、美咲は新たな決意を胸に、ペンを握る。遅く生まれた人生を、誇りに変えて。

この物語は、年齢の壁を超えた絆を描く。表紙はカラーで、時計塔を背景に美咲と拓也が手をつなぐ姿。モノクロのページでは、影の濃淡で感情の揺らぎを表現。50ページで、緊迫の逃亡と心の交流を織り交ぜ、読後感に温かさを残す一話完結作品。