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▶【新刊】「人妻陰陽師サクヤ 闇計篇」星野竜一

「人妻陰陽師サクヤ 闇計篇」

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「人妻陰陽師サクヤ 闇計篇」

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京都の古い町並みにひっそりと佇む古刹、月読寺。その裏手に広がる竹林の奥に、賀茂咲夜の屋敷はある。彼女は史上最強と謳われる陰陽師であり、18歳を過ぎたばかりの若さで、すでに数々の妖魔を退治してきた伝説の存在だ。咲夜は、穏やかな微笑みと鋭い眼差しを併せ持ち、どんな危機にも動じない冷静さで知られている。彼女の夫、悠真は、温和で心優しい書道家。咲夜の戦いを陰ながら支え、彼女の帰りをいつも静かに待っている。

この物語の舞台は、現代と古の境界が曖昧に交錯する京都。市中の喧騒から離れた山間の社には、「禍門」と呼ばれる異界への扉が存在する。この門は、時折、人の世に災いをもたらす妖魔を吐き出す。咲夜の役目は、その禍門を通って現れる妖魔たちを封じ、京都の平穏を守ることだ。彼女の術は、陰陽道の秘術と彼女自身の強い精神力に裏打ちされており、どんな強力な妖魔もその前にはひれ伏してきた。咲夜の名は、妖魔たちの間で恐れられ、人の世では希望の象徴とされていた。

しかし、ある秋の夜、異変が起こった。禍門から現れた妖魔は、これまでとは異なる不気味な気配をまとっていた。そいつは、漆黒の霧のような姿で、目に見えない速さで動く。咲夜はいつものように結界を張り、退魔の呪符を放ったが、驚くべきことに、その妖魔には一切効果がなかった。妖魔は不敵な笑みを浮かべ、咲夜に囁く。「お前の力は、俺には通じない」。その声は、まるで心の奥底に直接響くようだった。初めて感じる無力感に、咲夜の心は一瞬揺らぐ。

この妖魔は「魅影」と呼ばれる存在だった。過去のどの文献にも記されていない、未知の力を持つ敵だ。魅影は、人の心の隙間に入り込み、恐怖や迷いを増幅させる力を持っていた。咲夜は、己の精神を鍛え上げてきた自負があったが、魅影の力は彼女の心の奥に隠された小さな不安を掘り起こし、増幅させた。それは、悠真との穏やかな生活を守りたいという強い願いと、それが壊れるかもしれないという恐れだった。

咲夜は、単なる力業ではこの敵に勝てないことを悟る。彼女は、かつて師匠から教わった「心の調和」を思い出す。陰陽師の力は、ただ妖魔を滅するだけでなく、己の心と向き合い、調和を保つことで最大の力を発揮するのだ。咲夜は、屋敷に戻り、悠真の書いた一幅の書を手に取る。「静謐」と書かれたその文字は、彼女の心を落ち着かせ、戦いへの決意を新たにさせた。

翌夜、咲夜は再び禍門の前に立つ。魅影が再び現れ、彼女を嘲笑うが、咲夜は目を閉じ、深く呼吸を整えた。彼女は自分の心の弱さを認め、それを力に変える術を編み出した。結界の代わりに、彼女は自らの精神を解き放ち、魅影の力を逆に吸収する新たな術を展開する。それは、彼女の心の光で闇を照らすような、圧倒的な力だった。魅影は驚愕し、初めて後退する。

戦いは熾烈を極めたが、咲夜の心は揺らがなかった。彼女は、悠真との生活、京都の平穏、そして自分の信念を守るために戦った。ついに、魅影は光の中に溶けるように消滅し、禍門は静寂を取り戻した。

これは、賀茂咲夜の新たな戦いの幕開けに過ぎなかった。魅影の出現は、何か大きな闇が蠢いている前触れなのかもしれない。星野竜一が描く、陰陽師サクヤの物語は、ここからさらなる試練へと続く。彼女の力と心が、京都の未来をどう切り開くのか、その第一章が今、始まる。