PR

▶【新刊】「鈴木と佐藤」シニストラ

「鈴木と佐藤」

無料サンプルはこちら ▶

 

 

 

 

「鈴木と佐藤」

無料サンプルはこちら ▶

 

 

 

 

 

 

====================================

日々、教育の最前線で奮闘する男、田中浩一は、38歳のベテラン教師だ。都心の私立大学予備校で、大学受験生を指導する彼の日常は、決して平穏とは言えなかった。クラスに在籍する生徒たちは、皆18歳以上の大人びた若者たちだが、授業中にスマホをいじり、宿題を無視し、教師の言葉を鼻で笑う問題児ばかり。浩一の熱心な指導も虚しく、模擬試験の成績は低迷を続け、上層部からの叱責が絶えない。朝から晩まで職員室と教室を往復する日々が続き、ストレスは頂点に達していた。家に帰れば、妻との会話も減り、独り酒を煽る夜が常態化。鏡に映る自分の疲れ切った顔を見るたび、心に暗い影が忍び寄っていた。

そんなある雨の午後、浩一の人生に転機が訪れた。授業後の自習室で、いつものように居残りを命じられた生徒、鈴木美咲と佐藤遥が、浩一のデスクに置いたままのノートパソコンを勝手に弄っていたのだ。画面に映し出されたのは、二人による衝撃的な秘密の動画。美咲は19歳、遥は20歳。予備校の寮でルームシェアをする親友同士で、将来の学費を稼ぐため、密かに動画投稿サイトに自らのプライベートな姿をアップロードしていた。そこには、互いの信頼を背景に、親密で大胆な行動が克明に記録されていた。浩一は息を呑み、即座に動画をコピー。二人を呼び出して問い詰めると、美咲は青ざめ、遥は涙目で土下座した。「先生、絶対に内緒にしてください。お願いです……」二人は必死に懇願した。

浩一の頭脳は瞬時に回転した。教師として生徒を正す道を選ぶか、それともこの弱みを武器に……。長年のフラストレーションが爆発し、彼は冷徹な提案をした。「この動画を学校やご両親にばらまかれたくなければ、私の言う通りにするんだ」。こうして始まったのは、浩一の闇の計画。動画投稿サイトに、新たなアカウントを作成し、二人の動画を編集してアップロードし始めたのだ。タイトルは「秘密のルームメイト・ナイト」と曖昧にし、顔はモザイク処理で隠蔽。内容は、二人が互いに寄り添い、感情を高め合う様子を、照明の柔らかなニュアンスを活かして美しく仕上げた。初回の投稿は瞬く間に数万回の再生を記録し、収益がポタポタと入金された。

分配のルールはシンプルだった。収益の7割を美咲と遥に分け与え、残りを浩一の取り分とする。最初、二人は恐怖から渋々従った。美咲は文学部志望の内気な文学少女で、遥は芸術学部を目指す明るい絵描き肌の才媛。予備校の授業料と生活費に追われ、こうした手段に手を出した過去を浩一に握られた以上、逆らう術はなかった。アップロードのたび、浩一は二人を寮に呼び、カメラの前で新たなシーンを指示。「もっと自然に、互いの想いを表現してごらん」。二人は頰を赤らめながら従い、動画はどんどん人気を博した。1ヶ月で収益は数百万円に膨れ上がり、二人は学費の心配から解放され、予備校の成績も上向きになった。浩一も、教師としてのプレッシャーから逃れ、贅沢なディナーや高級時計を手に入れた。

しかし、本音はどうだったのか。表向きは「仕方なく受け入れている」と語る二人だが、夜の寮室で密かな会話が交わされる。「遥、今日の撮影……なんか、ドキドキしちゃったよね」「うん、美咲。先生の目が熱くて、でも私たち、ただの道具じゃないよ。自分たちの絆を、こんな形で世界に発信できるなんて……少し、解放された気がする」。実は、二人は予備校入学前からの幼馴染で、互いへの想いが友情を超えていた。浩一の計画は、皮肉にもその想いを可視化するきっかけとなった。収益分配のおかげで経済的自由を手に入れ、動画制作は次第に「創作活動」へと昇華。浩一の指示は厳しかったが、二人はそこにスリルと達成感を見出していった。美咲は「先生のおかげで、表現の勇気が出た」と日記に綴り、遥は「これで本当の自分を認められた」とスケッチブックに描き加えた。

一方、浩一自身も変化した。最初は復讐心だけで動いていたが、二人の輝く表情を見るうちに、教師としての使命感が蘇った。「俺はただ、彼女たちを導いているだけだ」。動画のコメント欄には「美しい絆」「感動した」と称賛の声が溢れ、浩一は密かに満足した。だが、いつかこの秘密がバレる日が来るかもしれない。それでも今は、この奇妙な共犯関係が、皆の心を満たしていた。雨の午後から始まった物語は、欲望と信頼の狭間で、予想外のハッピーエンドへと向かおうとしていた――。