パチ屋の喫煙所でライターカチカチやってる女のコがいたので、ライターを貸してあげた。
ちょっと話してみると、変なコ。
しゃべり方も、趣味も、なんか個性的で、ペースを乱される。
「ライター貸したら童貞卒業できた話」
「ライター貸したら童貞卒業できた話」
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パチンコ屋の喧騒が少し遠のく喫煙所で、いつものように一服しながら時間を潰していた。煙草の煙がゆらゆらと立ち上る中、隅っこのベンチに座った一人の女の子が目に入った。黒髪を無造作に束ね、派手めなネイルの指でライターをカチカチと鳴らしている。火がつかないのか、それともただの癖か。彼女の表情はどこか苛立たしげで、眉間に細かな皺が寄っていた。
「火、貸すよ」と思い立って、ポケットから自分のライターを取り出して差し出す。彼女は一瞬びっくりした顔でこっちを見上げ、ぱっと笑みを浮かべた。「マジ? ありがとー!」その声は意外に低めで、関西弁のアクセントが混じっていた。ライターを受け取り、煙草に火をつけると、深く吸い込んでゆっくり吐き出す。煙が彼女の顔を優しく包み、化粧の薄い頰が少し赤らむ。
少し話しかけてみた。名前はあかり、24歳だって。普通の会話のはずが、すぐに脱線した。「最近ハマってるの? 占いアプリ。今日の運勢が『大当たり』だってさ。でもパチンコじゃ全然当たんないんだよねー。宇宙の陰謀かな?」彼女のしゃべり方はリズミカルで、言葉の端々に奇抜な比喩が飛び出す。趣味は「廃墟探索と深夜ラジオ」だとか。俺のペースが一瞬で乱され、普段の無難なトークが通用しない。変なコだな、と思いながらも、妙に引き込まれる。煙草を分け合い、くだらない世間話で30分ほど過ぎた頃、彼女は突然立ち上がって「またね!」と手を振った。残された俺は、なぜか心臓が少し速く鳴っていた。
それから数日後、同じパチンコ屋の同じ喫煙所で再び出くわした。彼女は今度はスナック菓子を頰張りながら座っていた。「お、ライターマン! また会ったね。運命?」とニヤリ。俺が苦笑いしていると、彼女は目を輝かせて提案してきた。「ねえ、勝負しない? どっちがたくさん煙草の煙出せるか。ルールは簡単、1本吸って一気に吐き出して、量で競うの。負けたらなんでも言うこと聞くよ」怪しげな響きに警戒しつつ、暇つぶしに付き合ってみた。結果は惨敗。彼女の肺活量は尋常じゃなく、煙の雲が俺の視界を覆うほど。俺の煙はしょぼく、彼女の爆笑が響いた。
「じゃ、罰ゲームね。なんでも言うこと聞いてもらいます」彼女の言葉に、俺は一抹の不安を覚えた。まさか本気の変な要求か? ところが、連れ出された先は意外にも街中の牛丼屋。カウンターで彼女が「特盛、ツケダレ多めで!」と注文し、俺の分までおごってくれた。熱々の丼を頰張りながら、彼女は満足げに頷く。「勝負の報酬は、まずお腹いっぱいにするのよ。次は……ふふ、秘密」その笑顔に、俺の警戒心は溶けていく。
食事が終わり、外に出ると彼女は自然に俺の腕を絡めてきた。「もうちょっと付き合ってよ」そう言って、向かったのは近くのラブホテル。心臓が早鐘のように鳴り、頭の中が真っ白になる。部屋に入ると、彼女はベッドに腰を下ろし、ゆっくりと上着を脱ぎ捨てた。現れたのは、想像以上の豊満な胸。柔らかく揺れるその曲線に、俺の視線は釘付け。パチンコ屋通いのヤニ臭い童貞野郎に、こんなビッグチャンスが訪れるなんて。彼女はくすくす笑いながら、俺の手を取って引き寄せる。「リラックスして。今日は私がリードするよ」部屋に満ちる甘い香りと、彼女の吐息が、俺のすべてを飲み込んでいった。あのライターの火種が、こんな炎を灯すとは――。今夜は、きっと忘れられない夜になる。