梅雨の終わり。窓の外には、雨上がりのしっとりとした空が広がっていた。遥は、いつも通り窓辺の席に座り、本を読んでいた。ページをめくる音だけが静かな教室に響き渡る。
「遥、窓際って涼しくていいね。」
後ろから、クラスメイトの圭太の声が聞こえた。圭太は、野球部のエースで、いつも明るくムードメーカーだ。遥は、少し照れながら「うん」と答える。
「ねえ、今年の夏は一緒に花火大会に行かない?」
圭太の突然の誘いに、遥はドキッとした。圭太は、遥のことを昔から気にかけていて、よく声を掛けてくれる。でも、遥は、圭太のことを友達としてしか見ていなかった。
「え、うん、いいよ。」
戸惑いながらも、遥は言葉にした。
数日後、圭太との約束の日がやってきた。二人は、いつものように学校の帰り道に寄り道をして、いつもの公園へ向かった。公園には、大きな木が数本生えていて、その木の下は、二人の秘密基地のような場所だった。
「あのさ、遥。」
圭太は、少し照れながら切り出した。「実は、ずっと言いたかったことがあるんだ。」
「え、な、なに?」
遥は、心臓がドキドキと鳴るのがわかった。
「遥のことが好きなんだ。」
圭太は、真剣な表情でそう告げた。遥は、その言葉に驚き、何も言えなかった。
「もしかして、嫌かな?」
圭太は、不安そうに遥の顔を見つめた。遥は、自分の気持ちに正直になろうと決心した。
「ごめんね、圭太。友達としてすごく嬉しいけど、私には、まだ圭太のことそういう風に…」
遥の言葉に、圭太の表情は曇った。しかし、すぐにいつもの明るい笑顔に戻った。
「そうか。わかったよ。でも、これからも友達でいてくれるよね?」
圭太の言葉に、遥は安堵した。
夕焼けが空を染めていく中、二人はいつものように一緒に帰路についた。雨上がりの空気は、澄みきっていて、二人の心も晴れやかだった。