「村又さんの愛情」




「村又さんの愛情」
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村又さんの愛情
真剣で、甘くて、ちょっとバカップル―― そんな言葉がぴったりな二人だった。
村又さん(三十路すぎの課長で、部下たちから「姐さん」って呼ばれてる頼れる女上司)と、梶くん(入社四年目の真面目な後輩で、俺の恋人)。 職場じゃ誰も知らない。知られたら面倒くさいし、村又さんも「立場があるから」って頑なだった。
付き合い始めて一年ちょっと。 最初は飲み会の帰り、酔った勢いでキスしたのがきっかけだった。あのとき村又さんが「梶くんって、意外と強引だよね」って笑った顔が、今でも頭から離れない。
それから少しずつ距離を縮めて、週末だけ会う関係になった。村又さんのマンションに行くのが一番多くて、玄関開けた瞬間「遅かったじゃん」って抱きついてくるのがお決まりだった。俺が仕事で遅くなると、わざと拗ねてみせたり、俺のシャツの匂い嗅いで「他の女の匂いしない?」って冗談めかして聞いてきたり。
初めて一緒に過ごした夜は、どっちも緊張してて笑っちゃうくらいぎこちなかった。 村又さん、普段はバリバリ仕事できるのに、ベッドの上だと急に恥ずかしがって「電気消してよ……」って小声で言ってきた。俺も手が震えて、キスするだけで精一杯だった。でも、朝起きたら村又さんが俺の腕の中で小さく寝息立ててて、なんかもう、それだけで胸がいっぱいになった。
ある日、村又さんが「実はさ」って切り出した。 「私、スプリットタンなんだよね」 って、舌をぱっくり二つに割いて見せてきた。 びっくりしたけど、なんか妙に可愛くて、俺、思わず「それ、どんな感じ……?」って聞いてしまった。そしたら村又さん、ニヤッと笑って「試してみる?」って。 ――その夜は、ちょっとした勝負みたいになって、どっちが先に音を上げるか、なんてバカなこと言いながら朝まで遊んでた。
アメリカ出張が決まったときは、正直辛かった。 一ヶ月も離れるなんて初めてで、ビデオ通話で顔見るたび「早く帰ってきてよ」って甘える村又さんが可愛すぎて、仕事に集中できなかった。向こうのホテルで一人でいると、急に不安になって「俺のこと、ちゃんと好きでいてくれるかな」なんて考えちゃう。そしたら夜中にメッセージが来て、
『梶くん、今何してる? 私、寂しくて寝れない……』
って。画面越しに泣きそうな顔してて、俺、いてもたってもいられなくなった。 帰国した日、空港で待ち伏せして、人がたくさんいるロビーでいきなり抱きしめた。村又さん、びっくりした顔してたけど、すぐに俺の背中に腕回してきて「バカ……人に見られるよ」って小声で笑った。
生理前になると、村又さん、いつもより甘えたがりになる。 「抱っこして」「頭なでて」「今日は優しくしてね」って、普段の強気な感じが�めくらかくなる。俺、内心すごく嬉しいんだけど、つい「今日はどうしたの?」って茶化したら、本気で拗ねられたこともあった。ごめんって謝ったら、急に泣き出して「私、梶くんに嫌われたらどうしようって……」って。 そんなとき、俺はただ黙って抱きしめるしかないんだ。
結婚の話が出たのは、去年の冬だった。 二人で初詣に行った帰り、雪がちらつく中、村又さんがぽつりと言った。 「私たち、このままでいいのかな」 俺、ドキッとした。だって、ずっと考えてたことだったから。 「俺は、村又さんとずっと一緒にいたいよ」 そう答えたら、村又さん、目を潤ませて「私も……」って小さく頷いた。
それから少しずつ、将来の話をできるようになった。 子供はどうする? 家はどこにする? 苗字はどっちのにする? 現実的な話になると、やっぱり立場とか年齢差とか、いろいろ気になることもある。 でも、村又さんはいつも最後には笑って「まあ、なんとかなるでしょ」って言う。 俺も、そうだよなって思う。
今、俺たちは小さな二世帯住宅の資料を見てる。 村又さんの両親も俺の親も、最初は驚いてたけど、二人でちゃんと挨拶に行ったら「村又さんが幸せならそれでいい」って言ってくれた。
来月、指輪を見に行く約束をした。 村又さん、「派手なの嫌いだからシンプルなのがいい」って言ってるけど、俺、内心ちょっと凝ったデザインにしようかと企んでる。 きっと「梶くんってほんとバカだね」って笑いながら、喜んでくれると思う。
不安も嫉妬も、変な欲望も、全部ひっくるめて、 俺は村又さんが大好きだ。 村又さんも、きっと同じ気持ちでいてくれる。
これからも、ドタバタしながら、甘ったるく、ちょっと恥ずかしいくらいラブラブで、 二人で生きていくんだ。
――村又さんの愛情は、こんなに大きくて、温かくて、ちょっと笑えるくらい真っ直ぐで。 俺の一生、全部預けてもいいって、心から思ってる。

