灼熱の太陽が、砂漠のように乾いた大地を照りつける。空には、どこまでも続く蒼が広がり、雲一つない。息をするのも辛いような暑さの中、私は汗だくになりながら、古い車を運転していた。
目的地は、この砂漠のど真ん中にある小さな町。地図には載っていない、いわば幻の町だ。子供の頃から、この町には不思議な力が宿っているという話を聞いていた。それは、永遠の命を手に入れることができるという、ある意味恐ろしい噂だった。
私は、その噂を信じて、この町を目指している。なぜなら、私にも叶えたい願いがあるからだ。それは、もう二度と会うことのない、大切な人をもう一度だけ抱きしめたい、という願い。
砂漠を走り始めてから、もう数日が経つ。車は、ガタガタと音を立てながら、砂丘を越えていく。道中の風景は、どこまでも同じで、心が折れそうになる。しかし、私は諦めなかった。なぜなら、私の心の中には、まだ希望の光が残っていたからだ。
ようやく、目的地の町が見えてきた。遠くから見ると、それは蜃気楼のようにゆらめいて見えた。しかし、それは紛れもない現実だった。町は、オアシスのように緑豊かな木々で囲まれていた。
町の中に入ると、そこはまるで時間が止まっているかのような静けさだった。古いレンガ造りの建物が立ち並び、通りには誰も歩いていない。私は、この町に一人しかいないのだろうか、そう思った。
ふと、足元に何かが光っているのに気がついた。それは、小さなガラス瓶だった。瓶の中には、カラフルな砂が入っていた。私は、その瓶を拾い上げ、そっとポケットに入れた。
しばらく町を歩いていると、ようやく人影を見つけた。それは、白髪の老女だった。老女は、井戸端で水を汲んでいた。
「こんにちは」
私は、恐る恐る声をかけた。
老女は、こちらを見て、にっこりと笑った。
「ようこそ、この町へ。あなたのような若者が、こんなところに来るなんて珍しいわね」
老女は、そう言うと、私に冷たい水を差し出してくれた。
私は、水を飲みながら、この町について尋ねてみた。
「この町には、何か特別なことがあるんですか?」
老女は、深いため息をついた。
「そうね…、この町には、永遠の命を手に入れることができるという噂があるわ。でも、それはただの噂よ。永遠の命なんて、手に入れることはできないわ」
老女の言葉に、私は少しがっかりした。しかし、すぐに立ち直った。
「でも、この町には、何か特別な力があるような気がします」
私は、そう言うと、ポケットに入れたガラス瓶を見せた。
老女は、瓶の中身を見て、目を輝かせた。
「それは、この町の砂よ。この砂には、不思議な力が宿っているの。願いを叶えてくれるかもしれないわ」
老女の言葉に、私は希望を感じた。私は、老女に教えてもらった方法で、願いを込めて砂に語りかけた。
しばらくすると、空が急に暗くなり始めた。そして、轟音とともに、砂漠に雨が降り始めた。私は、その雨の中に立って、自分の願いが叶うことを心から願った。
雨が上がり、再び太陽が顔を出すと、世界は一変していた。砂漠は、緑豊かな草原に変わり、町は、活気あふれる場所になっていた。
私は、もう一度、老女の家を訪ねた。老女は、私の変わり果てた姿を見て、驚きながらも喜んでくれた。
「あなたの願いは、叶ったようね。よかったわ」
老女は、そう言うと、私に小さな袋を手渡した。
「これは、お守りよ。いつでも身につけておきなさい」
私は、お守りを大切に胸にしまい込んだ。そして、老女に深々と頭を下げた。
「ありがとうございました」
私は、この町を後にし、再び砂漠を走り始めた。私の心には、もう何も恐れるものはない。なぜなら、私は、自分の願いを叶えることができたのだから。
私は、この砂漠を、永遠の故郷として、これからも生きていくつもりだ。