「異世界アナル物語〜エルフ編〜」黒ごま製造工場



「異世界アナル物語〜エルフ編〜」黒ごま製造工場
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異世界アナル物語〜エルフ編〜
黄門阿鳴は、二十五歳の童貞だった。部屋に閉じこもって十年近く、ネットの奥深くで自分の嗜好を追いかけていた。ある日、いつものように画面を見つめていると、突然視界が白く染まった。女神と名乗る声が耳について、こう告げた。「手違いで死なせてしまった。お詫びとして、記憶はそのままに異世界へ転生させてあげる」。
目を開けると、そこは見知らぬ森だった。体は軽く、筋肉が程よくついている。ステータス画面なるものが浮かび、勇者と書かれている。喜びより先に、違和感が湧いた。村人に事情を聞くと、この世界の魔王は異様に頑丈で、倒すには聖剣――つまり勇者の下半身を、魔王の後ろの穴に突き刺す必要があるという。村人たちは顔をしかめ、阿鳴は真っ赤になって逃げ出した。
足音が背後から追いかけてきた。振り向くと、白銀の髪を風になびかせた女性が立っていた。長い耳、透き通るような肌。エルフだ。「フィオナだ。勇者の仲間、三英雄の一人」と名乗る。彼女は弓を背負い、腰に短剣を差していた。瞳は鋭く、どこか挑戦的だった。
「さっきの戦い、見ていた。弱いな、勇者」
阿鳴は肩をすくめた。「元引きこもりだからな。技術なんてない」
フィオナは鼻で笑った。「なら、私が鍛えてやる」
勝負は一瞬だった。阿鳴は剣を振り回すが、フィオナの動きは水のよう。弓を構えるまでもなく、短剣の柄で腹を突かれ、地面に這いつくばった。村人たちが遠巻きに見ている。恥ずかしさと悔しさで、阿鳴の頭が沸騰した。
「もういい! お前と、別の勝負だ!」
「別の?」
「後ろの穴で、先にイッた方が負け」
周囲が凍りついた。フィオナは一瞬、目を丸くした。それから、ゆっくりと笑った。「面白い。受けて立つ」
森の奥、誰もいない古い廃墟。石の床は冷たく、苔の匂いが鼻を突く。月明かりが窓から差し込み、二人の影を長く伸ばす。阿鳴は震える手でズボンを下ろした。フィオナも、革の鎧を脱ぎ、布を一枚ずつ落としていく。白い肌が夜気に震える。
「本当にやるのか?」阿鳴は掠れた声で聞いた。
「負けず嫌いなのよ」フィオナは答えたが、瞳の奥に別の光があった。
最初はぎこちなかった。阿鳴は経験がない。フィオナも、初めての相手が勇者だなんて思ってもみなかった。体が触れ合うたび、息が漏れる。フィオナの背中が弓なりに反り、銀髪が石の床に広がる。痛みと快楽が交錯し、二人とも声を抑えきれなかった。
「まだ、負けない……」フィオナが呟く。
阿鳴は答えず、ただ腰を動かした。熱が体を駆け巡る。フィオナの指が背中に食い込み、爪が皮膚を裂く。血の匂いが混じる。廃墟の壁に、二人の影が重なり、離れ、また重なる。
どれだけ時間が経っただろう。フィオナの体が小刻みに震え始めた。息が荒くなり、声が途切れる。「だめ……もう……」
「負けろよ」阿鳴は囁いた。
フィオナは首を振ったが、限界だった。体が硬直し、熱い波が押し寄せる。彼女は声を上げ、阿鳴の肩に顔を埋めた。震えが収まるまで、しばらく動けなかった。
「私の……負け」フィオナは息を切らしながら言った。
阿鳴は勝ち誇った顔をしたが、すぐに疲れが襲ってきた。二人して床に倒れ込む。月明かりが静かに二人を照らす。
「なんで、こんな勝負に乗ったんだ?」阿鳴は尋ねた。
フィオナはしばらく黙っていた。それから、ぽつりと答えた。「運命、ってやつよ。勇者と三英雄は、昔から結ばれてる。体で、魂で」
「知らなかった」
「私も、今日まで忘れてた」
廃墟の外で、風が木々を揺らす。フィオナは体を起こし、阿鳴の横に座った。銀髪が肩に落ちる。「次は、ちゃんと鍛えてやる。魔王を倒すまで、逃げないで」
阿鳴は苦笑した。「逃げられないよ。もう、お前がいる」
二人は顔を見合わせ、初めて笑った。夜はまだ深く、森は静かだった。遠くで、魔物の遠吠えが聞こえる。明日からは、また戦いが始まる。でも今は、ただ二人だけの時間があった。
フィオナは阿鳴の手を握った。冷たい指先が、少しずつ温かくなっていく。異世界での日々は、きっとこんな風に、予想外の出来事で満ちている。阿鳴は目を閉じた。童貞だった自分が、こんな場所で、こんな相手と――不思議な縁だと、ぼんやり思った。
月が雲に隠れ、廃墟は再び暗闇に包まれた。

