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▶【新刊】「におわせ」ふくらすずめ

「におわせ」

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大学図書館の静かな一角で、主人公の悠斗は隣の席に座る「あまみ」こと天海遥香の存在に心を奪われていた。彼女の柔らかな髪から漂うフローラルなシャンプーの香りは、まるで春の花畑を思わせ、悠斗の集中力をそっとかき乱した。大学の講義でたまたま隣に座ったことから始まったこの席の縁は、悠斗にとって小さな幸運だった。

ある日、講義の合間にふと横に目をやると、遥香がノースリーブのブラウスを着ていて、腕を上げた拍子に彼女の脇が目に入った。清潔感のある白い肌に、ほんの少しだけ処理の甘い部分が見えた。それは、彼女の普段の完璧なイメージとは異なる、どこか人間らしい隙だった。悠斗はその意外な一面に心を奪われ、なぜかその日から彼女の脇を密かに観察するようになってしまった。彼女の無防備な仕草や、ふとした瞬間に垣間見えるその部分に、妙な魅力を感じていた。

しかし、そんな悠斗の行動は長く隠し通せなかった。ある日の放課後、遥香に突然呼び止められた。「ねえ、悠斗くん。単刀直入に聞くけど、なんで私の脇ばっかり見てんの?」 彼女の声は落ち着いていたが、鋭い視線に悠斗はたじろいだ。言葉に詰まりながらも、正直に答えてしまう。「え、っと…なんか、その…処理がちょっと残ってるのが、気になって…」 うっかり口を滑らせた瞬間、遥香の頬がほのかに赤らんだ。

「毛、ってこと? それが好きなの?」 遥香の声には驚きと少しの苛立ちが混じっていた。悠斗は慌てて弁解しようとしたが、彼女は一歩近づき、静かに続けた。「見られてるって気づいて、ちょっと恥ずかしかったんだから。…でも、ただじゃ気が済まないな。」 彼女の目がいたずらっぽく光った。遥香は腕を上げ、わざと脇を見せるようにポーズを取った。「ほら、じっくり見てよ。どう? 恥ずかしいでしょ?」

悠斗は動揺しながらも、彼女の挑発的な態度に引き込まれていた。遥香はそんな悠斗の反応を楽しむように、意地悪く笑った。「ねえ、こういうのって、ちょっとドキドキするよね? 私も、からかうの嫌いじゃないかも。」 彼女の言葉には、どこか好奇心が混じっていた。

それからというもの、二人の間には奇妙な関係が芽生えた。遥香は授業の合間にわざと脇を見せつけ、悠斗が赤面する様子を見て楽しむようになった。最初は単なる意趣返しだったはずが、遥香自身もこのやりとりに妙な楽しさを感じ始めていた。一方の悠斗も、彼女のからかいに戸惑いつつ、どこかでその刺激を求めている自分に気づいていた。まるで、お互いの心の奥に隠れた好奇心が共鳴し合っているかのようだった。

ある日、いつものように図書館で並んで勉強していると、遥香がふいに囁いた。「ねえ、悠斗くん。私、ちょっと意地悪な自分も悪くないなって思ってるよ。あなたも、こういうの嫌いじゃないよね?」 彼女の声は柔らかく、どこか本気だった。悠斗は小さく頷き、照れ笑いを浮かべた。「うん…なんか、変だけど、嫌いじゃない。」

二人の関係は、互いのちょっとした秘密を共有するような、独特の親密さに変わっていった。遥香のいたずらっぽい笑顔と、悠斗の戸惑いながらも受け入れる姿勢。お互いが少しずつ相手の心の隙間に入り込み、信頼と遊び心が交錯する関係が築かれていった。それは、単なる偶然の隣人から始まった二人が、互いの意外な一面を受け入れ、新たな絆を紡いでいく物語だった。