『ブラック企業の仮眠室がヤリ部屋になってた話2』
噂の「開かずの部屋」の正体
ブラック企業として知られる広告代理店で、連日不眠不休のデスクワークに追われるクリエイターの新太(あらた)。彼の会社には、社内の誰もが近寄らない「開かずの仮眠室」が存在していた。旧式の鍵がかかり、中から怪しげな光が漏れているという噂の部屋だ。
ある夜、激務で意識が朦朧とした新太は、フラフラと吸い寄せられるようにその扉の前へたどり着いた。鍵が半開きになっていることに気づき、意を決して扉を開けると、そこには信じがたい光景が広がっていた。
無機質な社内とは完全に切り離された、まるで怪しい秘密のサロン。紫やピンクのネオンライトが妖しく揺らめき、重厚な革張りソファと大量のアンティーク雑貨が整然と並べられている。そしてその中央には、チャイナドレス風のオリエンタルな衣装に身を包んだ女性が座っていた。
「……あら、お客様? 今夜の予約は入っていないはずだけど」
煙管(きせる)型の電子タバコから甘い香りの蒸気をくゆらせて振り返ったのは、別部署で「クールで話しかけづらい」と恐れられている先輩社員の凛子(りんこ)だった。
甘いリフレッシュと、密室の契約
「凛子さん……!? この部屋、一体……」
驚愕する新太に、凛子は大人の余裕を感じさせる笑みを浮かべた。彼女は会社に秘密で、物置だったこの部屋を改造し、過酷な労働環境を生き抜くための極上癒やし空間「深夜限定リフレッシュルーム」として裏営業(ただし完全無料の趣味)を行っていたのだ。
「立ち尽くしてないで、お入りなさい。そこまで目の下にクマを作られたら、デザイナーの名が廃るわ」
凛子に腕を引っ張られ、新太は柔らかいソファへ崩れ落ちた。凛子は新太の背後に回ると、細くしなやかな指先で、彼の凝り固まった肩や首筋をピンポイントで解きほぐし始める。
「くっ……! 凛子さん、力加減が……」
「動かないで。かなり疲れているわね。ほら、力を抜いて」
至近距離から聞こえる凛子の耳障りの良い声と、彼女の身体から漂うオリエンタルな香りに、新太の心臓は別の意味で激しく打ち鳴らされた。日頃の冷徹な姿からは想像もつかないほど親身で、どこか妖艶な凛子の距離感に、頭がどうにかなりそうだった。
「この部屋のことは、二人だけの秘密。その代わり……疲れたら責任を持って、私がいつでも癒やしてあげる」
耳元で甘く囁かれ、新太は赤面しながら深く頷くことしかできなかった。
怪しい部屋で深まる、ふたりの絆
それ以来、過酷な残業が続く夜の決まり事となった。深夜2時を過ぎると、新太は吸い寄せられるようにその「怪しい仮眠室」のドアを叩く。
妖しい光と甘い香りに包まれた空間で、二人は高級な紅茶を飲みながら、デザインのこだわりや将来の夢を語り合った。職場の厳しさから離れ、二人きりで過ごす時間は、いつしか新太にとって日々の過酷な業務を耐え抜く唯一の原動力となっていた。
ある日、プロジェクトのトラブルで大きな失敗をし、落ち込んでいた新太を、凛子は何も言わずにソファへ引き寄せ、自分の膝の上に彼の頭を乗せた。
「ううん、何も言わなくていいの。今夜はここで、私の体温を感じながら休みなさい」
膝枕越しに伝わる凛子の太ももの柔らかさと、優しく髪を撫でる手の温もり。新太は凛子の腰にそっと手を回し、その温もりに強くすがりついた。
「凛子さん……俺、もう凛子さんなしの生活なんて考えられません」
「ふふ、重症ね。私の『怪しい仮眠室』の毒に、完全にハマっちゃったかしら?」
凛子は愛おしそうに目を細め、新太の額にそっと自分の額を重ね合わせた。不気味で怪しいはずだった社内の秘密基地は、いつしか二人にとって世界で一番甘く、解けることのない恋の魔法がかかる特別な場所となっていた。
『ブラック企業の仮眠室がヤリ部屋になってた話2』
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