『はじめまして!わたし、中堅同人作家です』




『はじめまして!わたし、中堅同人作家です』
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あらすじ:『はじめまして!わたし、中堅同人作家です』
プロローグ:深夜の締切と、画面越しの「神」
都内のゲーム会社でサウンドクリエイターとして働く伊織 薫(いおり かおる・26歳)は、極度の人見知りで、休日は自宅の防音室で楽曲制作に没頭するのが唯一の生きがいというインドア青年でした。
そんな薫には、密かに「人生の推し」と仰ぐ同人作家がいました。サークル「アトリエ・クレール」を主宰する白石 朱莉(しらいし あかり・24歳)です。
朱莉の描く作品は、美しい色彩と圧倒的な世界観が魅力で、同人イベントでは常に中堅どころのポジション。大行列の壁サークルではないものの、コアなファンから絶大な支持を得ていました。薫は彼女の描く絵からインスピレーションを受けて曲を作るほど、彼女の才能に惚れ込んでいたのです。
「いつか自分の作った曲を、彼女の作品のBGMにしてもらえたら……」
そんな淡い夢を抱いていた薫のもとに、ある日、朱莉のSNSから一通のダイレクトメッセージが届きます。
『はじめまして!わたし、中堅同人作家の白石朱莉と申します! 伊織さんの作られる音楽の大ファンです! 今度の個展用のPV制作で、楽曲を提供していただけないでしょうか……!?』
画面の前で固まる薫。憧れの「推し」からの予期せぬアプローチにより、二人の運命のギアが動き始めました。
遭遇:オンライン打ち合わせと、ギャップだらけの素顔
数日後、初めて行われたオンラインでのビデオ通話。
画面に現れた朱莉は、SNSでの洗練された絵のイメージとは少し異なり、大きめのパーカーを着て髪をひとつにまとめた、親しみやすくチャーミングな女性でした。
「ほんっとうに緊張しました〜! 憧れの伊織さんとお話しできるなんて夢みたいです!」
画面越しに弾けるような笑顔を見せる朱莉。人見知りの薫も、彼女の飾らない人柄と作品への熱い情熱に接するうちに、自然と緊張がほぐれていくのを感じました。
「白石さんの絵には、いつも心を揺さぶられています。僕の方こそ、お手伝いさせてください」
薫が引き受けたことで、二人の共同制作プロジェクトがスタートしました。何度も音声通話やデータのやり取りを重ねるうちに、二人の会話は仕事の枠を超え、互いの趣味や人生観、夜遅くまでの雑談へと広がっていきます。
展開:二人きりのスタジオと、募る愛おしさ
楽曲の最終調整のため、朱莉が薫の自宅兼プライベートスタジオを訪れることになりました。
「うわぁ……! ここが伊織さんの魔法の部屋なんですね!」
機材が並ぶ部屋で目を輝かせる朱莉。作業中、ヘッドホンを共有して音を確認する際、二人の距離は息がかかるほど急接近します。朱莉の髪から漂う甘い香りと、真剣に音に耳を澄ませる横顔に、薫の心臓は激しく打ち鳴らされました。
一方の朱莉も、普段はおとなしい薫が音楽に向き合う際に見せる鋭い眼差しと男らしい横顔に、胸が締め付けられるようなトキメキを覚えていました。
「伊織さんの曲を聴いていると、描きたい世界がどんどん溢れてくるんです。……私、伊織さんと出会えて本当に良かった」
「僕もです、朱莉さん。君の絵があったから、僕はこんな素晴らしい曲を作れた」
作品を通して魂を響かせ合う二人。画面越しでは気づかなかった互いのぬくもりと存在感に、二人は言葉にできない甘い情熱を抱くようになっていきました。
試練:予期せぬ盗作疑惑と、消えた笑顔
個展の開催まであと一週間と迫ったある日、事態は急変します。
ネット上で、朱莉の個展のメインビジュアルが「他の大手のイラストを盗作しているのではないか」という根も葉もない悪質な噂が拡散されてしまったのです。
「中堅のくせに大手に擦り寄っている」「話題作りの自作自演だ」といった心ない批判に晒され、朱莉は深く傷つき、ペンを握れなくなってしまいました。
「ごめんなさい、伊織さん……。私なんかが個展なんてやろうとしたから、伊織さんの素敵な曲まで汚しちゃって……」
電話越しに泣きじゃくる朱莉。自分を責め、諦めようとする彼女の声を聞いた瞬間、人見知りで争い事を避けてきた薫の中に、強い怒りと決意が芽生えました。
転機:言葉ではなく「音」で伝える想い
薫はすぐさま自分のスタジオに籠もり、徹夜で一曲の新しいピアノ曲を書き上げました。そしてその音源を持ち、雨が降る中、朱莉のアパートへと駆けつけました。
ドアを開けた朱莉は、目を真っ赤にして憔悴しきっていました。薫は迷わず彼女の華奢な肩をしっかりと抱き寄せました。
「伊織……さん……?」
「朱莉さん、これを聞いてください」
薫はスマホから、出来立ての楽曲を再生しました。そこには、朱莉がこれまで描いてきた優しく美しい絵へのリスペクトと、彼女を傷つける全ての不条理から守りたいという、薫の魂からの愛が込められていました。
「誰が何と言おうと、僕は知っています。朱莉さんがどれだけ誠実に、どれだけ強い愛を込めて絵を描いてきたか。……僕の音楽は、君の絵のためだけに存在します。だから、描くのをやめないでください!」
曲から伝わる溢れんばかりの情熱と、自分を全身全霊で信じてくれる薫の温もり。朱莉の瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。
「伊織さん……っ! 私、描く……! 伊織さんの音楽と一緒に、私の世界をみんなに見せたい……っ!」
朱莉は薫の胸に顔をうずめて強く抱き返しました。二人は雨の音を聞きながら、互いの溢れる愛を確かめ合うように、静かに、そして深く唇を重ね合わせました。
エピローグ:世界で一番響き合う二人
疑惑は有志のファンたちの検証によって完全に晴れ、個展は大盛況のうちに幕を開けました。
会場に飾られた美しい絵と、そこに完璧に溶け込む薫の音楽。訪れた多くの人々が、その幻想的な空間に涙を流し、絶賛の声を上げました。
会場の隅で、二人はこっそりと手を繋ぎ合っていました。
「伊織さん、聞こえますか? 私たちの作った世界が、みんなに届いてます!」
「ええ、最高の個展ですね。……あ、白石さん、そろそろ呼び方を変えてもいいですか?」
照れくさそうに明かす薫に、朱莉は悪戯っぽく微笑み、ギュッと手を握り返しました。
「ふふ、ダメです! 私たちの『最初の挨拶』は、一生大切な秘密ですから」
クリエイターとして、そして愛するパートナーとして。二人で奏でる幸せな恋の旋律は、これからもずっと色鮮やかに響き続けていくのです。
『はじめまして!わたし、中堅同人作家です』
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