「孕ませ屋4」



「孕ませ屋4」
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孕ませ屋4
電車が田舎の駅に着いたのは、もう夕方近くだった。
スマホの電波も途切れがちで、待ち合わせ場所の写真だけ頼りに歩く。山の奥、古い屋敷がぽつんと残ってるような場所だ。門をくぐると、まるで時間が止まったみたいな大きな日本家屋があって、玄関の引き戸が少しだけ開いてた。
「お待ちしておりました。寺田様でいらっしゃいますね」
声の主は、黒髪を長く伸ばした和服の女性だった。名前はすみれ。年齢はたぶん三十代の後半くらい。写真で見るよりずっと色っぽくて、でもどこか世間知らずな空気をまとってる。奥の座敷に通されて、まずはお茶をいただきながら話が始まった。
「実は……私、子供が欲しいんです。でも普通の方法では難しい事情があって」
訳あり、ってのは本当だった。彼女はこの屋敷にずっと閉じ込められるように暮らしてきたらしい。親族のしきたりだとか、病気のせいだとか、詳しくは言わない。でも、処女だってことはすぐにわかった。触れるのも初めてみたいな震え方をするから。
俺は正直に条件を伝えた。
「直接、中に出さないと意味がないんです。俺の精子はそれじゃないとちゃんと働かないって、データで証明されてるんで」
すみれさんは最初、目を丸くしてた。でも、子供が欲しいという気持ちの方が強かったみたいで、小さく頷いた。
「お願い……します。私、怖いけど、あなたなら大丈夫だって、そう思うんです」
その夜、初めてのことは寝室でゆっくりやった。
着物を脱がせる手が震えて、俺もなんだか緊張してた。昔、祖父の実験のせいで女の子を傷つけた記憶がちらつく。でも、すみれさんは痛みに耐えながらも、俺の手をぎゅっと握り返してくれた。
「大丈夫……あなたがいてくれるから」
二度目、三度目になるにつれて、彼女の反応が変わっていった。
最初は恥ずかしそうに顔を背けてたのに、だんだん自分から腰を寄せてくる。夜中に目を覚ますと、そっと俺の胸に頬を寄せて、熱い吐息を漏らしてる。
「もっと……奥まで、欲しい」
朝になると、彼女はもう別人みたいに積極的だった。
風呂場で背中を流してるうちに、後ろから抱きついてきて、耳元で囁く。
「昨日の続き、したい……ね?」
湯船の中で重なり合って、湯気が立ち上る中、何度も何度も繋がった。
彼女の長い髪が水に濡れて、俺の肩に絡みつく。白い肌が湯に赤く染まって、そのたびに小さな声で俺の名前を呼ぶ。
「暁斗さん……暁斗さん……」
二日目の昼前、仕事は終わったはずだった。
でも、すみれさんは玄関まで見送りに来て、俺の袖を掴んだ。
「帰らないで」
目が潤んでる。
俺は苦笑いしながら頭を撫でた。
「また来るよ。約束する」
でも、本当はわかってた。
この仕事は一度きりでいいはずなんだ。次が来るかもしれないけど、それは別の誰かで。
電車に乗って、窓の外を見ながら考える。
すみれさんのこと、本当は好きになってたのかもしれない。
でも、俺は孕ませ屋だ。感情なんて持っちゃいけない。
スマホが震えた。精子バンクの須藤さんからだ。
【お疲れ様でした。すみれ様からすごく良い報告が来てます。
また近いうちに、次のご依頼をお願いするかもしれません】
ため息をついて、スマホをポケットにしまった。
窓に映る自分の顔が、なんだか疲れて見えた。
孕ませ屋の仕事は、まだまだ続きそうだった。

