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【解禁】『あの日、素直に好きと言えたなら2』SMUGGLER

『あの日、素直に好きと言えたなら2』

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第一章:解けない方程式と、雨の日の沈黙

濡れたアスファルトに反射する街灯のあかりが、夜の静寂を静かに照らしていた。大学を卒業してから数年が経ち、社会人として多忙な日々を送っていた結衣(ゆい)は、職場のデスクでひとり、古い手帳を開いていた。そこに挟まれていたのは、学生時代に幾度となく通った図書館の貸出カード。裏面には、一人の男性の名前が記されていた。——陸(りく)。
結衣と陸は、同じ研究室で共に過ごした大切な存在だった。難解なプログラミングの課題や論文の執筆に追われる日々の中で、二人はいつも隣にいた。言葉を多く交わさずともお互いの考えていることが理解できる、そんな特別な空気が二人の間には流れていた。
しかし、結衣の心の中には、ずっと口にできない想いがあった。不器用で真っ直ぐな陸の優しさに惹かれていたものの、この良好な関係を壊してしまうのが怖くて、「好き」というたった四文字の言葉をどうしても伝えることができなかったのだ。一方の陸もまた、研究や将来の夢に対する不安から、自分の感情を素直に表現できずにいた。
二人の関係が大きく動いたのは、学生生活も終わりに近づいたある雨の日の夕方だった。研究室の窓から外を眺めていた陸が、静かに口を開いた。
「大学を卒業したら、海外の研究所へ行くことに決めた」
その言葉を聞いた瞬間、結衣の心臓は激しく跳ね跳ねた。胸の奥から溢れ出しそうな想いを必死に押し殺し、結衣は精一杯の笑顔を浮かべて「おめでとう」とだけ返した。もしあの日、雨音に紛れて自分の本当の気持ちを打ち明けていたなら、二人の未来はどう変わっていただろうか。離れ離れになってから数年が経過した今でも、結衣の心にはその残像と後悔が残り続けていたのだった。

第二章:再会のカフェと交差する視線

季節は巡り、木々が鮮やかに色づく秋の週末。結衣は同僚に勧められた郊外の静かなカフェで、ノートパソコンを開いて仕事をしていた。コーヒーの芳醇な香りが漂う店内は、柔らかな木漏れ日と静かなBGMに包まれていた。
ふと店のドアが開く音がして、鈴の涼やかな音が響いた。結衣が何気なく入口に目をやると、そこに立っていたのは、長く会っていなかった陸の姿だった。数年という歳月を経て、以前よりも少し大人びた雰囲気を纏っていたが、その優しい目元と凛とした佇まいは当時のままだった。
驚きで息をのむ結衣と、店内を見渡していた陸の視線が交差する。陸の目が大きく見開かれ、驚きと懐かしさが混ざり合った表情を浮かべた。
「結衣……? こんなところで会えるなんて」
陸は結衣の前の席に腰を下ろし、二人は止まっていた時間を埋めるように話し始めた。陸は海外での研究活動を一旦終え、日本に戻って新しいプロジェクトを立ち上げるために帰国したのだという。二人は学生時代の思い出や、今の仕事の苦労、お互いが歩んできた道について語り合った。
会話が進むにつれ、結衣は自分の胸の奥で眠っていた想いが、一気に燃え上がるのを感じていた。月日が流れても、陸に対する感情は少しも色褪せていなかったのだ。しかし、今の陸には自分以外の特別な存在がいるかもしれないという不安が、結衣の言葉を再び遮ってしまう。
「あの頃、結衣と過ごした時間は、僕にとってかけがえのないものだったよ」
陸がポツリと呟いた言葉に、結衣の胸は強く締め付けられた。お互いに大切な存在であることは確かだが、あと一歩を踏み出す勇気が出ない。二人の間には、優しくも切ない透明な壁が依然として存在していた。

第三章:あの日の続きを、新しい言葉で

再会を果たしてから数週間後、陸から「見せたい場所がある」と連絡が入った。週末の夕刻、二人が向かったのは、学生時代によく二人で訪れていた小高くなった公園の展望台だった。眼下には、オレンジ色に染まる街並みと、次第に灯りがともり始める綺麗な夜景が広がっていた。
秋の冷たい風が頬をかすめる中、二人は並んで夜景を眺めていた。静寂が二人を包み込む。陸は意を決したように深く息を吸い、結衣の方をしっかりと向いた。
「結衣、ずっと言えなかったことがあるんだ。あの雨の日、海外行きを決めたとき、僕は本当は君に引き止めてほしかった。君のことがずっと好きだったんだ。でも、自分の未熟さのせいで伝えることができなかった」
陸の口から語られた突然の告白に、結衣は目を見開いた。ずっと自分の一方通行だと思っていた想いが、実はあの頃から通じ合っていたのだと知り、視界が涙で滲んでいく。長年抱えていた後悔と、切なさが一気に解け出していくようだった。
「私も……私もずっと陸が好きだった。あの日、素直に好きと言えたならって、何年も後悔していたの。怖くて逃げていたのは私の方だった」
結衣の目からこぼれ落ちる涙を、陸は優しく指で拭った。二人がずっと胸の奥に閉じ込めていた素直な感情が、ついに夜空の下で重なり合った。かつて言葉にできなかった後悔は、お互いを深く理解するための大切な時間だったのだと、二人は確信した。
「遅くなってしまったけれど、これからはずっと隣にいてほしい」
「はい、喜んで」
互いの温もりを感じながら、二人はしっかりと手を繋ぎ直した。あの日言えなかった言葉を越えて、二人は確かな愛とともに、新しい物語の一歩を踏み出したのだった。

 

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