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▶【新刊】「村又さんの愛情 6」井雲くす

デートに浮かれる梶と村又さん。雑貨屋でマグカップを揃えたり、映画館で地雷映画をくらったり、居酒屋で泡をつけ合ったり……と、ふつうの一日を過ごすはずが、気づけば人生最大のイベント「結婚」の話に発展! 勢いで飛び出したプロポーズ、順番ぐちゃぐちゃの指輪購入、そしてどしゃぶりの中で走る二人。ドタバタだけど最高に甘くて……村又さんの愛情、ここに大団円!

「村又さんの愛情 6」

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陽光が柔らかく差し込む街角を、梶と村又さんは肩を寄せ合いながら歩いていた。待ちに待った休日のデートに、梶の頰は上気し、普段のクールな表情が緩みきっていた。一方の村又さんは、穏やかな笑みを浮かべ、梶の小さな仕草一つ一つに優しく目を細める。まるで世界が二人だけのものになったかのように、浮かれた空気が二人を包み込んでいた。

まずは、路地裏の小さな雑貨屋へ。色とりどりの棚に並ぶ日用品に目を輝かせ、梶は「これ、二人でお揃いにしようよ!」と、無邪気にマグカップを指差した。白地にさりげない花柄のものと、シンプルなグレー。村又さんは少し照れくさそうに頷き、梶の選んだカップを手に取る。「これで毎朝、君の淹れたコーヒーを飲めるね」と囁くと、梶の耳まで赤く染まった。店主の老婆がにこやかに見守る中、二人はカップを胸に抱え、店を出た。些細な買い物が、未来の日常を予感させる宝物のように感じられた。

次に、街の中心にある古びた映画館。ポップコーンを分け合い、暗闇に沈むスクリーンを見つめるはずが、上映されたのは予想外の「地雷映画」だった。陳腐なラブストーリーが延々と続き、梶は途中で肘で村又さんを突つき、「これ、絶対リメイク失敗作だよね」と小声で毒づく。村又さんは肩を震わせて笑いを堪え、「でも、君と一緒なら何でも楽しいよ」と耳元で返す。エンドロールが流れる頃には、二人は互いの手を固く握りしめ、映画の安っぽさが逆に絆を深めていた。外に出ると、夕暮れの風が心地よく、笑い声が街路に溶けていった。

夜は賑やかな居酒屋で。カウンターに並んで座り、ビールを注文すると、グラスに浮かぶ泡が互いの頰に飛び散る遊びが始まった。「ほら、村又さん、泡ついたよ!」と梶が指で突っつくと、村又さんは仕返しに軽くグラスを傾け、泡を飛ばす。店内の喧騒に紛れ、二人は子供のようにはしゃいだ。焼き鳥の煙が立ち上る中、話題は自然と未来へ。「一緒に暮らしたら、こんな毎日が続くのかな」と梶がつぶやくと、村又さんの目が真剣に輝いた。「そうだね。君となら、どんな日も特別だよ」。

そんな何気ない会話が、気づけば人生最大のイベント「結婚」の渦中へ。居酒屋を出た帰り道、街灯の下で村又さんが突然立ち止まり、「梶、ずっと一緒にいてくれないか?」と勢いのままプロポーズを口にした。梶は目を丸くし、頰を両手で覆うも、すぐに涙混じりの笑顔で頷く。順番など気にせず、二人はそのまま近くのジュエリーショップへ駆け込んだ。閉店間際の店員にせがまれ、慌てて指輪を選ぶ羽目に。梶の好みのシルバーリングを村又さんがはめ、逆もまた然り。サイズが微妙にずれ、笑いが止まらぬまま、ようやく二人は店を後にした。

ところが、空は一転してどしゃぶりの雨。傘など持たず、二人は手をつないで全力疾走。雨粒が頰を叩き、服がびしょ濡れになる中、梶は「こんなプロポーズ、ありえないよ!」と叫びながらも、村又さんの手を離さない。村又さんは息を切らし、「でも、君の笑顔が最高だ」と返す。ようやくアパートに辿り着き、濡れた体で抱き合う二人。ドタバタの連続だった一日が、最高に甘い余韻を残した。村又さんの深い愛情が、梶の心を優しく満たす。ここに、二人の物語は大団円の幕を閉じた──いや、新たな始まりの第一歩を踏み出したのだ。