『隣の席のダウナーギャルは僕のことを独占したい!2』
第1章 無口な隣人と静かな日常
都内のIT企業でシステムエンジニアとして働く拓海は、目立たないことを第一に心がける控えめな性格の青年である。彼の勤めるオフィスでは最近、フロアの模様替えに伴う座席の再配置が行われた。そこで拓海の隣の席に指定されたのが、社内でもひときわ独特なオーラを放つデザイナーの凛香だった。
凛香は印象的な髪色と現代的なメイク、個性的で華やかな服装に身を包んだ、いわゆるギャル風の外見をしている。しかし、その雰囲気は一般的にイメージされる明るく賑やかなギャルとは正反対で、常にテンションが低く、口数も極めて少ない「ダウナー系」の女性であった。周囲の社員たちも、彼女のどこか話しかけづらい空気に遠慮し、業務上の最低限の会話以外では距離を置いていた。
拓海も最初は彼女との接し方に戸惑っていたが、もともと他人のプライベートに深く立ち入らない性格だったため、変に気負うことなく淡々と業務を進めた。話しかける時も必要最小限の連絡事項を丁寧かつ静かに伝えるだけにとどめ、彼女の静かなペースを脅かさないよう配慮した。
そんな拓海の自然体で押しつけがましくない態度が、いつも周囲からの視線や好奇心に疲れ果てていた凛香にとっては、思いがけず居心地の良いものだった。彼女は日々の仕事の中で、隣で静かにキーボードを叩く拓海の横顔を、前髪の隙間からじっと見つめる時間が増えていった。
「拓海さん、これ……差し入れ」
ある日の午後、低く落ち着いた声とともに、拓海のデスクの上に温かい缶コーヒーが一つ置かれた。驚いて顔を上げた拓海に、凛香は視線をそらしたまま小さく呟く。「いつも静かに仕事させてくれるから、そのお礼」。それが、二人の間に生まれた最初の小さな変化だった。
第2章 影のように重なる距離
その日を境に、凛香の拓海に対する行動が少しずつ、しかし明確に変わり始めた。彼女は自分のデスクに座っている時間の大半を、拓海の方へとほんの少しだけ体を傾けて過ごすようになった。拓海が資料の確認で隣を向くと、いつも至近距離で彼女のアンニュイな瞳と視線がぶつかる。
さらに、凛香の「独占欲」は密やかに、そして着実にオフィスの中で発揮され始めた。拓海が他の部署の女性社員と笑顔で業務の打ち合わせをしていると、どこからともなく冷ややかな視線が注がれる。打ち合わせが終わって拓海が席に戻ると、凛香はあからさまに不機嫌な雰囲気を醸し出し、椅子の引き出しを少し強めに閉めたり、聞こえるか聞こえないかの音量でため息をついたりした。
「拓海さん、さっきの人と何話してたの……? 仕事の話だけだよね」
ボソリと呟かれる問いかけには、隠しきれない独占欲が滲み出ていた。拓海が「来週のシステム改修の打ち合わせだよ」と答えると、彼女はほっとしたように肩の力を抜き、拓海の袖口を小さく引っ張った。「ふーん……ならいいけど。拓海さんの隣は私なんだから、あんまり余計な愛想振りまかないで」
不器用で直接的な言葉に、拓海は驚きつつも強烈に心を揺さぶられた。一見すると冷めていて感情を表に出さない凛香が、自分に対してだけは感情を露わにし、執着を見せてくれる。最初は戸惑っていた拓海だったが、彼女の重すぎるほどの情熱と、時折見せる嫉妬の表情に、次第に愛おしさを覚えるようになっていった。
第3章 独占宣言と重なる心
季節が移り変わり、会社の創立記念パーティーが市内のホテルで開催された。華やかな会場には多くの社員が集まり、日頃はあまり話さない同僚同士が交流を深めていた。
拓海も他のチームのメンバーから酒席に誘われ、輪の中心で会話を楽しんでいた。しかし、遠くの壁際に一人で立ち、グラスを手にしながらこちらをじっと見つめる凛香の存在がどうしても気になっていた。彼女の表情はこれまで以上に暗く、寂しげに見えたからだ。
拓海が会話を切り上げて凛香のもとへ歩み寄ると、彼女は即座に拓海のの手首をキュッと掴み、周囲の目を盗んで会場の外にある静かなテラスへと引っ張っていった。夜風が吹き抜ける静寂の中、凛香は拓海の手を放そうとせず、俯いたまま絞り出すように声を上げた。
「どうして私の近くにいてくれないの……。みんなと楽しそうに話してる拓海さんを見てたら、胸が苦しくて壊れそうだった。私以外の誰にも、そんな優しい顔見せないでほしい」
凛香の瞳には小さな涙が浮かんでいた。いつも低音でクールな彼女が、声を震わせながら素直な想いをぶつけてくる。その姿を目にした瞬間、拓海の中で迷いは完全に消え去っていた。
「ごめんね、気づかなくて。でも、僕が本当に大切に思っているのは凛香さんだけだよ。隣にいるのが当たり前になって、君の存在が僕にとって一番大きくなってたんだ」
拓海が優しく言葉を返すと、凛香は目を見開いた後、安堵したように拓海の胸に顔をうずめた。「本当……? じゃあ、これからもずっと私の隣にいてくれる? 他の誰にも譲らないからね」
低く甘い声で告げられた独占宣言に、拓海はしっかりと頷き、彼女の体を抱きしめ返した。静かな夜空の下、独占欲の強いダウナーなギャルと真面目な青年の恋は、確かな絆となって二人を強く結びつけたのだった。
『隣の席のダウナーギャルは僕のことを独占したい!2』
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