『デリヘルチケット使ったら・・・来たのは大好きな推しでした。』





『デリヘルチケット使ったら・・・来たのは大好きな推しでした。』
第一章:当たったのは「一日限定サポート」?
都内のWEB制作会社で働く颯太(そうた)には、毎日の過酷な残業を乗り越えるための唯一の希望があった。それは、アコースティック系のインディーズシンガーとして活動し、最近若者の間で大ブレイクを果たした女性ソロアーティスト・流花(るか)の存在だ。
透明感あふれる歌声、飾らない等身大の歌詞、そしてライブのMCで見せる無邪気な笑顔。颯太にとって流花は、遠い世界で自分を支えてくれる「心の支え」であり、誰よりも大好きな存在だった。
そんな颯太が、ある日音楽レーベルの開設記念キャンペーンに応募した「一日限定・ライフサポートチケット」の抽選に、なんと世界でたった一人当選したという通知が届く。
チケットの概要は「プロのコンシェルジュがあなたの自宅に赴き、一日限定で家事や日常のサポートを行ってくれる」というものだった。疲労困憊だった颯太は、「たまには人に甘えるのもいいか」と軽い気持ちでチケットの利用を申し込み、週末の朝を待つことにした。
そして約束の土曜日。指定された午前十時ちょうどに、颯太のアパートのインターホンが鳴った。
「はい、どうぞー」
ドアを開けた颯太は、そこに立つ人物の顔を見た瞬間、あまりの衝撃に息を止めた。
大きめのキャスケットを目深にかぶり、私服のパーカーを着た小柄な女性。彼女が帽子を少し持ち上げ、申し訳なさそうに照れ笑いを浮かべたその顔は、画面やライブ会場で毎日眺め続けていた、あの流花そのものだったのだ。
第二章:画面の向こうの彼女と、二人きりのキッチン
「え……っ!? り、流花さん……!?? なんでここに……!?」
パニックになり、ドアをそっと閉めようとする颯太を、流花は慌てて引き留めた。
「ちょっと待ってください! 逃げないでー!」
流花が慌てて説明したところによると、実はこのキャンペーン、元々は事務所が「流花がファンの自宅を訪問して感謝を伝える」という秘密の特別企画として準備していたものだったという。しかし、事務所の手違いで告知の段階では「プロのコンシェルジュ」とぼかして記載されてしまっていたのだ。
「驚かせてごめんなさい! でも、当選されたのが颯太さんでよかったです。ライブでもいつも前列で応援してくれてますよね? 顔、覚えてますよ」
「え……覚えててくれたんですか……!?」
憧れの推しが、自分の狭いアパートの玄関に立っている。それどころか、自分の顔を認知してくれていた。颯太の心臓は、破裂しそうなほど激しく打ち鳴らされた。
エプロンを身につけた流花は、手際よくキッチンへ向かった。
「今日は一日、私が颯太さんをお世話する日ですから! いつも応援してくれるお礼に、美味しい朝ごはん作りますね!」
そう言って腕をまくる流花の姿は、ライブステージでの神聖な雰囲気とは違い、等身大の可愛らしい一人の女性の素顔だった。トントンと包丁を叩く軽快な音、お味噌汁のあたたかい香り。画面越しでしか見られなかった彼女が、今、自分だけのために料理を作っているという事実に、颯太は胸が熱くなって仕方がなかった。
第三章:楽譜の余白と、隠された孤独
手料理を二人で囲み、美味しい朝食を食べ終えたあと、二人はリビングのソファーで並んで座り、音楽や日常についての話に花を咲かせた。
颯太が流花の楽曲のどこに救われてきたのかを真摯に伝えると、流花は恥ずかしそうに頬を染めながら、じっと颯太の言葉に耳を傾けた。
「颯太さんって……すごく温かい言葉をくれるんですね」
ふと、流花がソファーの端で小さくため息をつき、膝の上で手をギュッと握り締めた。
「私ね、最近大勢の人に歌を聴いてもらえるようになって、すごく嬉しいんだけど……時々、すごく怖くなるの。本当の自分を見てもらえてないんじゃないか、誰も私自身の素顔なんて見てくれてないんじゃないかって……」
華やかな表舞台の裏で、流花が抱えていた深い孤独とプレッシャー。
颯太は一瞬怯んだものの、意を決して彼女の細い肩をそっと包み込むように手を伸ばした。
「流花さん。僕は、ステージの上で歌う流花さんも大好きです。でも、今日こうして目の前で笑ったり、困ったりしている流花さんのことも……すごく素敵だと思っています。どんな流花さんだって、僕にとっては掛け替えのない存在です」
颯太の飾らない、けれど真摯な本音の言葉。流花の瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「颯太さん……!」
流花は感情を抑えきれなくなり、颯太の胸元へと飛び込んできた。
第四章:チケットの有効期限と、解けない魔法
ふわりと漂う彼女の髪の香りと、服越しに伝わる華奢な身体の温もり。颯太は彼女の背中に優しく手を回し、溢れ出る愛おしさを込めて強く抱きしめ返した。
「ありがとう……颯太さん。私、ずっとこんな風に……本当の自分を抱きしめてくれる人を探してたのかもしれない」
流花は颯太の胸元に顔を埋めながら、涙声で小さく呟いた。
「一日限定サポート」のチケットの有効期限である夕暮れ時が近づいても、二人は離れられずにいた。手と手を固く握り合い、お互いの体温を確かめ合う。かつては「アーティストとファン」という遠い関係だったふたりが、今や誰よりも深く心を寄せ合う一対の男女として、そこに存在していた。
「颯太さん……このチケットの時間、終わっちゃうね」
寂しそうに上目遣いで見つめてくる流花に対し、颯太は彼女の手を強く握り返した。
「チケットは終わりだけど……僕と流花さんの関係は、ここから始まりです。これからは『ファン』としてじゃなく、一人の男として、流花さんを一生支えさせてください」
耳元で紡がれた熱い誓いに、流花は涙を拭い、今日一番の飛びっきりの笑顔を咲かせた。
「はい……! 私の『一番のファン』から、私の『特別な人』になってください」
玄関のドアが開いたあの日から始まった奇跡。一枚のチケットが手繰り寄せた運命の恋は、画面やステージの壁を越えて、ふたりだけの甘くあたたかな愛の物語として永遠に紡がれていくのだった。
『デリヘルチケット使ったら・・・来たのは大好きな推しでした。』
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