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【最高】『ママさんバレーなのにママじゃないからママにしてっ!!』伊達ろく

『ママさんバレーなのにママじゃないからママにしてっ!!』

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『ママさんバレーなのにママじゃないからママにしてっ!!』

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第1章 期待のニューヒロインと、コート外の迷走

市民体育館のコートから、キュッ、キュッとバッシュの摩擦音が響き渡る。地域で高い実績を誇るママさんバレーボールチーム「ブルースカイ」の練習日だ。メンバーの平均年齢は高く、長年のチームワークと絶妙な連携で数々の大会を制してきた強豪である。そこに突如として現れたのが、新人選手の優香(ゆうか)だった。
優香は運動神経が抜群で、スパイクの威力和ジャンプ力はチームでも群を抜いていた。彼女が加わったことで「ブルースカイ」の戦力は大幅にアップし、次の地区大会優勝も間違いなしと周囲は大盛り上がりを見せる。しかし、チームにはひとつだけ大きな問題があった。
このチームが参加する大会の規約には、「チーム内に所定人数の『母親』が登録されていること」という条件が存在していたのだ。そして優香は、メンバーの中で唯一、独身で子どももいない「ママではない選手」だった。
「優香ちゃん、本当に助かるわ! でも、大会の登録申請期限は来月なのよね……」
キャプテンのベテラン選手から渡された登録用紙を見つめ、優香は頭を抱えた。彼女はこのチームと、バレーボールというスポーツを心から愛している。そして何より、このチームのコーチを務める直樹(なおき)に対して、密かな想いを寄せていた。
直樹は誠実で温厚な性格の持ち主で、選手一人ひとりのコンディションを細やかに気遣う頼れる存在だ。彼が親身になって指導してくれる姿を見るたび、優香の胸は高鳴っていた。
「直樹コーチ! 私、どうしてもこのチームで大会に出たいんです。ママじゃないから出られないなんて嫌です!」
練習後の誰もいない体育館で、優香は直樹に詰め寄った。勢い余って口をついて出た言葉が、タイトルにもなったあの叫びだった。
「ママさんバレーなのにママじゃないから、私をママにしてっ!」
その突拍子もない言葉に、直樹は飲んでいたペットボトルを吹き出しそうになり、顔を真っ赤にして固まった。優香自身も自分の発言の意味に気づき、瞬時に顔を火照らせる。もちろん、彼女が言いたかったのは「どうにかして出場資格を満たす方法を一緒に考えてほしい」という意味だったのだが、直樹に対する恋心が混ざり合い、とんでもない言葉となって飛び出してしまったのだ。
気まずい沈黙が流れる中、直樹は咳払いをして真面目な表情を作った。
「気持ちは嬉しいけれど、ルールはルールだ。それに……そんな言い方をされたら、僕だってどう反応していいか困るよ」
こうして、大会の登録期限までのカウントダウンとともに、二人の妙な距離感と「ママさんバレー出場資格獲得」に向けた奇妙な試行錯誤が始まるのだった。

第2章 擬似家族作戦と、急接近する距離

大会出場のために残された道はいくつかあった。特別参加枠の申請、あるいは登録上の特例措置の適用である。しかし、それらを通すためには「地域社会との深い結びつきと、家族に準ずる貢献度」を証明する必要があった。
そこでキャプテンたちの提案により、チームのイベントとして「地域親子バレー体験教室」を開催し、優香と直樹が中心となってその運営を任されることになった。子どもたちの指導を通じて、優香が実質的に母親と同等以上の愛情と責任感を持って地域活動に携わっている実績を作ろうという作戦だ。
準備のために、二人は練習以外の時間も一緒に行動することが増えていった。体育館のミーティングルームで夜遅くまで資料を作ったり、必要な用具を買い出しに行ったりする中で、二人は指導者と選手という枠を超えて、互いの素顔を知っていく。
直樹はかつて自身もプレイヤーとして挫折した経験があり、だからこそ一生懸命にバレーボールに向き合う優香の姿に心を動かされていたことを明かした。
「優香さんがコートで見せるまっすぐな瞳や、諦めない姿勢に、僕はいつも勇気をもらっているんだ」
直樹のまっすぐな言葉に、優香の心臓は激しく打ち鳴らされた。
体験教室の当日は大盛況となった。子どもたちに優しくスパイクの打ち方を教える直樹と、子ども目線になって一緒にボールを追いかける優香。その姿は、周囲から見ればまるで仲睦まじい夫婦のようであり、子どもたちからも「コーチとお姉ちゃん、本当のパパとママみたい!」とはやし立てられる始末だった。
子どもたちの無邪気な言葉に、二人は顔を見合わせ、気まずそうに、しかしどこか嬉しそうに微笑み合った。
「私……本気なんです」
イベントが終わった後の夕暮れ時、片付けを終えた体育館の陰で、優香は直樹の服の袖をキュッと掴んだ。
「バレーボールの大会に出たいのも本当です。でも、私をママにしてほしいって言ったのは……直樹コーチの特別な人になりたいっていう意味でもあったんです」
突然の本格的な告白に、直樹は言葉を失った。夕日に照らされた優香の表情は真剣そのもので、冗談や勢いで言っているのではないことが痛いほど伝わってきた。
直樹は深く息を吐き出し、優香の目を見つめ返した。しかし、指導者としての立場と、彼女の情熱に対する戸惑いが交錯し、すぐには答えを出すことができなかった。登録期限は、目と鼻の先に迫っていた。

第3章 栄光のコートと、ふたりが出した答え

大会登録の最終締め切り前日、実行委員会からの回答がチームに届いた。地域貢献度の証明と、チーム全員からの推薦状、そして特別指導枠としての特例申請が認められ、優香は「特別参加選手」として正式に大会に出場できることが決まったのだ。
「やったあーっ!」
部室で歓声が上がり、メンバーたちは優香を囲んで抱き合った。優香の目から涙がこぼれ落ちる。自分の情熱と、チームの仲間たち、そして直樹が諦めずに動いてくれたおかげで勝ち取った権利だった。
そして迎えた大会当日。館内には熱気が満ち満ちていた。ブルースカイは順調に勝ち進み、決勝戦へと駒を進める。相手は前年度王者の強豪チームだった。
接戦が続き、最終セットの終盤。激しいラリーの末、相手の強烈なスパイクがブルースカイのコートに襲いかかる。レシーブが乱れ、ボールがコート外へ飛びそうになったその時、直樹の声が響いた。
「優香、繋げ!」
その声に応えるように、優香はなりふり構わずボールへ飛び込み、決死のトスを上げた。上がったボールをキャプテンが渾身の力で相手コートへ叩き込む。ピッ、と試合終了の笛が鳴り響いた。優勝が決まった瞬間だった。
歓喜に沸くコート内で、メンバーたちが手を取り合って喜ぶ中、優香は一直線にベンチの直樹のもとへ走っていった。
「直樹さん! 勝ちました! 私たち、優勝しました!」
感情を爆発させる優香を、直樹はしっかりと受け止めた。拍手と歓声が包み込む体育館の中で、直樹は優香の耳元で静かに、しかし確かな声で語りかけた。
「素晴らしいプレーだったよ、優香さん。……それと、ずっと待たせてしまってごめん」
直樹は優香の肩を優しく抱き寄せ、まっすぐに見つめた。
「君が言ってくれたあの言葉、最初は驚いたけれど……準備期間中、ずっと君と一緒に過ごして、君の真っ直ぐな優しさに惹かれていたのは僕の方だ。大会が終わったら、指導者と選手としてではなく、一人の男性として、君と付き合ってほしい」
優香の目が大きく見開かれ、すぐに溢れんばかりの笑顔に変わった。
「はい! もちろん喜んで!」
周囲の先輩メンバーたちからは「あらあら~!」「おめでとう!」と温かい冷やかしと盛大な拍手が送られた。
ママではないけれど、チームの愛される一員となり、そして最愛のパートナーの手を掴んだ優香。体育館のコートの上で、二人の新しい物語が静かに幕を開けたのだった。

 

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