「ポンコツ独身メイドあかねさん(28)」



「ポンコツ独身メイドあかねさん(28)」
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ポンコツ独身メイドあかねさん(28)
朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、埃がキラキラ舞ってる。もう八時か。
あたし、相変わらず布団の中でぐずぐずして、ようやく起き上がる。28歳、独身、彼氏ナシ。
まあ、正確には「彼氏だと思ってる人」はいるけど、あれはただのヒモで、毎月お小遣いあげてるだけだからカウントしない。
鏡の前に立って、寝癖だらけの髪を梳かす。胸はそこそこあるし、腰のラインも悪くないはずなのに、どうしてこうなるんだろう。
子供の頃から、ちょっとしたことでムラムラしちゃう体質だった。
学校の帰り道で好きな人のことを考えるだけで、帰宅してすぐ自分の部屋に駆け込んで……みたいな。
そんな調子だから、まともな恋愛なんてしたことない。
でも口だけは達者で、友達には「経験豊富なんだから!」って威張ってる。嘘だけど。
嘘ってわかってるのに、つい言っちゃう。寂しいんだもん。
最近、やっと気づいた。
このままじゃ本当にヤバい。三十路目前で独身メイドのままじゃ、笑えない。
そろそろ本気で結婚したい。ちゃんとした人と、ちゃんとした家庭を築きたい。
……って、思ってるのに、朝からまた指が勝手に動いちゃうから始まってる。
あーあ、もう。
今日もメイド服に袖を通して、屋敷の廊下を歩く。
雇い主は資産家の未亡人で、息子さんが一人。坊ちゃま、って呼ばれてるけど、もう25歳だっけ。
顔立ちは整ってるし、頭もいい。大学出てからも家に引きこもりがちで、趣味はゲームと……まあ、男の子の趣味、ってやつ。
あたしは朝食の支度をして、リビングに運ぶ。
「おはようございます、坊ちゃま」
「お、おはよう……あかねさん」
相変わらず顔を赤くして、目を泳がせる。かわいいなぁ。
その日の午後、洗濯物を干してたら異変に気づいた。
あたしの下着が、一枚足りない。
黒のレースのやつ。昨日脱いだやつ。
……まさか。
胸がドキドキした。もしや、坊ちゃまが?
夜、こっそり坊ちゃまの部屋の前まで行って、耳を澄ます。
かすかに聞こえる、息づかい。
そして、くぐもった声。
「あかねさん……あかねさん……」
やっぱり!
あたしの下着、盗んでたんだ!
しかも、あたしを想って……!
ドアの隙間からそーっと覗くと、案の定、坊ちゃまはベッドの上であたしの下着を顔に押し当てて、必死に腰を動かしてる。
若いってすごいな、って感心しちゃうくらい、勢いがある。
あたし、思わずドキドキして、その場で膝がガクガクした。
だって、25歳のイケメンに、自分の下着でそんなことされるなんて、夢みたいじゃない。
次の日、あたしは作戦を立てた。
結婚するなら、坊ちゃまって悪くない。
お金持ちだし、顔もいいし、何よりあたしのこと、めちゃくちゃ好きみたいだし。
行き遅れの28歳、メイドの身分だけど、ここは一発、逆転を狙うしかない。
朝食のとき、わざとスカートを短めにしてみた。
「坊ちゃま、今日は卵焼き、どうですか?」
「う、うん……おいしい……」
視線がチラチラ、あたしの太ももに釘付け。
よしよし、効いてる効いてる。
その後も、掃除のときにわざと尻を突き出したり、
お風呂上がりにバスタオル一枚で廊下をうろついたり、
「坊ちゃま、肩凝ってません? マッサージしますよ~」って背中を揉みながら、胸をちょっと押しつけたり。
坊ちゃま、毎日顔真っ赤にして、鼻血ブーしたり、慌てて部屋に逃げ込んだり。
可愛すぎて、こっちまでドキドキしっぱなし。
でも、肝心のところで進展しない。
あたし、焦ってきちゃった。
ある夜、とうとう決意した。
ノックして、坊ちゃまの部屋に入る。
「坊ちゃま、ちょっとお話が……」
「え、あ、あかねさん!? こんな時間に……!」
パジャマ姿の坊ちゃま、慌てて布団に潜り込む。
あたし、ベッドの端に腰かけて、にっこり笑った。
「ねえ、坊ちゃま。あたしのこと、どう思ってる?」
「え、えっと……その……」
「正直に言って。いいよ」
坊ちゃま、顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声で呟いた。
「す、好きです……ずっと、あかねさんが……」
やったー!
あたし、勢いで坊ちゃまに抱きついた。
「じゃあ、付き合って!」
「ええっ!?」
「ダメ?」
「い、いや、ダメじゃないけど……でも、あかねさん、俺なんかでいいの?」
「いいに決まってるじゃん! 坊ちゃま、優しいし、かっこいいし、何より……あたしのこと、ちゃんと見てくれてるもん」
坊ちゃま、目を潤ませて、ぎゅっと抱きしめ返してきた。
熱い。
若いって、すごい。
それからというもの、屋敷の中はもう大変。
未亡人お嬢様にはまだ内緒だけど、こっそりデートしたり、
夜は坊ちゃまの部屋でくっついて寝たり。
もちろん、手は出すけど「最後までは結婚してからね!」って約束。
坊ちゃま、毎日悶々としてて、可愛くて仕方ない。
でも、行き遅れメイドの逆襲は、まだ始まったばかり。
次は、お嬢様に認めてもらうこと。
そして、ちゃんとしたプロポーズ。
あたし、ポンコツだけど、今回は本気だよ。
28歳、独身、メイド。
でも、もうすぐ「坊ちゃまの奥さん」になれるかもしれない。
ドキドキが止まらない、毎日が楽しい。
あかねさん、がんばるぞー!

